トランプ関税の試練、トヨタ自動車やホンダといった大手には吸収余力、一方でマツダや三菱自動車など中堅には厳しい状況が続く

トランプ米大統領が自動車関税を引き下げる大統領令に署名した5日(米国時間4日)、日本の自動車業界からはひとまず安堵の声が聞かれた。しかし、27.5%から15%に下がるタイミングが明確になったとはいえ、4月以前の2.5%に比べれば税率は6倍。トヨタ自動車やホンダといった関税の影響を吸収する余力のある大手に比べ、マツダや三菱自動車など中堅には厳しい状況が続くとの見方が専門家からは出ている。
一歩前進も税率は6倍
トヨタは大統領令の署名を受け、「当社が米国で販売する自動車の8割近くは北米で生産されているが、この枠組みは大いに必要とされていた明確性を提供する」とコメントした。別の日本車メーカー幹部は「やっと15%の適用時期のめどが立った。これで具体的に対策を決めやすくなるので一歩前進とは言えるが、関税負担は厳しい」と話した。
SBI証券の遠藤功治チーフエグゼクティブアナリストは「ひょっとしたら関税が27.5%のまま年末まで続くのではないかと思っていた人もいた中、15%の適用時期が見えたので、ひとまず安心だ」と言う。一方、15%の税率は高いと指摘した上で、「ニューノーマルとして今後受け入れないといけないのか、それとも米国最高裁が違法と認識してトランプ関税が撤廃されるのか、まだ先行きは不透明だ」と語る。
もともとの2.5%から27.5%へ関税が引き上げられた4月以降、日本の自動車メーカーが値上げする動きは当初、限定的だった。各社が自社で関税コストを背負った形だが、米国内に積み上げていた在庫が底をついたこともあり、6月以降は値上げが相次いだ。遠藤氏は、関税コストを吸収する値上げが「これからさらに本格化する」と予想する。その上で、ブランド力が今後の売れ行きを左右するとみる。
商品の値段が上昇する中で、ブランド力が強く下取り価格が高かったり、人気のある新車やハイブリッド車のラインアップが充実したメーカーは優位との見立てだ。