「イヌ」より嗅覚が優れた動物は実は「ゾウ」だった?――なぜ自由自在に動かせるのか?ゾウの鼻のナゾを獣医病理医が解説

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

前述のとおり、ゾウには結核菌が感染することが知られています。

結核は、人では結核菌が主に空気感染によって体内に入り込み、肺に病気を起こす慢性感染症です。かつては不治の病、亡国病、国民病などとも呼ばれ恐れられてきましたが、有効な薬や予防法の普及で激減しました。

しかし、日本は先進国の中でも結核の罹患率は高く、依然として重要な感染症であることには変わりありません。

結核菌にはヒト型結核菌、ウシ型結核菌、アフリカ型結核菌などいくつかの種類があって、種類によってどの動物に感染するかが、ある程度異なります。

人とゾウの間で感染する病気

人に感染するのは主にヒト型結核菌です。また、ウシ型結核菌はウシやシカに感染しますが、人に感染することもあります。

ヒト型結核菌は人以外にも類人猿やそのほかのサル類、イヌ、ウシなどへの感染が知られていますが、ヒト型結核菌のアジアゾウへの感染も、日本を含むアジアや欧米各国でよく知られています。

不思議でおもしろい動物たちの「からだの中」の話;獣医病理学者が語る臓器と病気
『不思議でおもしろい動物たちの「からだの中」の話』(緑書房)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

アジアゾウは結核菌に感染しやすいようで、人からゾウ、そしてゾウから人へも感染することがあります。ゾウからゾウへ感染するのかどうかはまだ分かっていません。

このように動物と人との間で感染する感染症のことを人獣共通感染症と呼んでいます。人獣共通感染症には、動物から人に感染する病気が多いのですが、ヒト型結核菌による結核は人から動物に感染する数少ない人獣共通感染症の1つです。

ゾウは結核に感染していてもはっきりとした症状が出ないことが多く、ゾウの結核予防、早期診断、治療方法の開発はとても重要で、世界中のゾウの研究者が研究しています。

感染して症状が出る頃には病状が進行していることもあるため、発症する前に診断をして治療することが大切です。

また、感染していても無症状の場合、知らないうちにまわりの人や動物に感染を引き起こしてしまう問題もあります。

中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかむらしんいち / Shinichi Nakamura

1982年生まれ。大阪府出身。岡山理科大学獣医学部獣医学科講師。獣医師、博士(獣医学)、獣医病理学専門家、毒性病理学専門家。麻布大学獣医学部卒業、同大学院博士課程修了。京都市役所、株式会社栄養・病理学研究所を経て、2022年4月より現職。イカやヒトデからアフリカゾウまで、依頼があればどんな動物でも病理解剖、病理診断している。著書に『獣医病理学者が語る 動物のからだと病気』(緑書房,2022)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事