「イヌ」より嗅覚が優れた動物は実は「ゾウ」だった?――なぜ自由自在に動かせるのか?ゾウの鼻のナゾを獣医病理医が解説
ゾウの外鼻孔(がいびこう:鼻の穴)は2つあって、ここから空気を出し入れして呼吸をしていることは私たちと共通しています。
しかし、ゾウはそれ以外にも、鼻でものを触って確認したり、葉っぱや豆のような小さなものから丸太サイズの大きなものまで色々なものをつかんだり、餌や水を口に運んだり、鼻を高く上げてにおいを嗅いだりと、私たち人が手を使ってあらゆることをしているのと同じくらいに鼻が多様な役割を果たしています。
ときには鼻を使って敵を威嚇したり攻撃したり、ほかのゾウとコミュニケーションをとったりと、感情表現にも利用しています。ゾウにとってまさに鼻はなくてはならない存在です。
ゾウの鼻は何万本もの筋肉線維でできていて、骨もないため自由自在に動かすことが可能なのです。私たちの舌が発達した筋肉でできていて、色々な方向に動かすことができるのと同じような感覚でしょうか。
おまけに神経もたくさん分布していて触覚も発達しています。さらに前述したように嗅覚受容体の数も哺乳類の中では突出して多いことから、嗅覚も非常に発達しています。
ちなみに、鼻という名称を使っていますが、正確にはゾウの鼻は上唇(上くちびる)と一体になって伸びた構造です。
ゾウの鼻の検査はダイナミック
皆さんは定期的に健康診断を受けていますか? そのときに胸のレントゲン検査を受けますよね。
胸のレントゲン検査では胸にX線を照射することで、肺結核や肺炎、肺がんなど、主に肺の病気がないかを調べています。結核の診断にはほかに、痰を採取して結核菌を調べる喀痰検査も利用されています。
ゾウは人と同様に結核になることがあります。ところがゾウは巨大で胸壁もかなりぶ厚いため、とてもレントゲン検査はできませんし、痰を採取することも容易ではありません。
そこでゾウでは、鼻の中を洗った液体(鼻腔洗浄液といいます)を培養検査して結核菌がいないか調べることで、結核の診断がされています。
この検査を行うにはまず、数十ミリリットルの生理食塩水(体液と同じ濃度になるように調整した塩水)をゾウの外鼻孔から注入します。そして鼻を持ち上げて鼻の中を洗ったあと、鼻を下ろして生理食塩水を回収するというものです。鼻が長いゾウならではの方法ですよね。
ただし、最近では血液検査で抗体の有無を調べることも多いです。
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