トヨタの小型モビリティは公共交通になるか 2020年に向けた「i-ROAD」普及計画の全貌

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なぜオープンロードプロジェクトを始めたのか。トヨタ自動車商品・事業企画部未来プロジェクト室主任の志村和広氏によれば、「都市の移動をゼロからデザインする」ことが発想の原点であり、都市の自由な移動はプロダクトだけでは解決せず、サービスを組み合わせ、その体験全体をデザインすべきであるという理由からだった。

都内港区の虎ノ門ヒルズにある「i-ROAD」駐車場

そのためにトヨタでは、東京都港区と渋谷区に約200カ所の駐車場を用意した。パイロットに配られるスマートフォンには専用アプリが入っており、駐車場の検索や予約が可能であるほか、充電状況の確認もできる。

超小型モビリティは、車両だけでなく充電スポットや専用駐車場などのインフラも含めて開発していかないとメリットを発揮しにくい。この点では鉄道に近い存在と言える。だからこそトヨタがサービスを含めての研究開発に取り組んでいることに感心した。

ドリフトしているような運転感覚

筆者がパイロットを務めたのは2015年8月29日からだった。海外出張時を除いて、2日に1回の割合で乗った。ミニカー登録となる日本仕様は1人乗りで、最高速度は時速60キロ、満充電での航続距離は50キロメートルに限られ、満充電には200ボルトで3時間掛かる。一般的な乗用車のようにどこでも好きな場所に行けるというわけにはいかない。

もっとも他の交通では、たとえば鉄道では新幹線と路面電車のように、目的に合わせた細分化がなされている。自動車の世界でも、都市環境をこれ以上悪化させないために、使い分けが必要であると多くの研究者が提唱している。

カーブではモーター内蔵の前輪が上下に動きながら曲がる

こうした使い分けを前提とすれば、i-ROADは十分な性能を持っていた。筆者の事務所のある東京・渋谷区本町から、江東区、大田区、練馬区は往復できる。超小型の電気自動車だから、環境に負荷を掛けず、スペースを無駄遣いせずに移動できる。東京にふさわしい乗り物であることを実感した。

しかも乗って楽しい。丸いステアリングや背もたれを持つシートは自動車的だが、カーブではモーター内蔵の前輪が上下に動き、オートバイのようにボディを傾けて曲がっていく。おまけに左右に首を振るのは後輪なので、車体後部を外に張り出させ、ドリフトしているような感覚を与えながら旋回していく。

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