黒人女性向け美容業界にもトランプ関税が直撃、安価だったウィッグのほか、編み込み式エクステに用いられる付け毛や接着剤の価格が急騰
店で扱う商品のおよそ50%は中国製であり、人工ウィッグやプラスチック製カーラー、ゴムバンド、くしやブラシなどの価格は上昇傾向にあるとダイアンさんは述べた。
「自宅でヘアを整える女性が増え、美容熱が高まり、客足が伸びるかもしれないと思っていた」と彼女は述べた。「でも今のところ来店者は減る一方で、常連客が来る頻度も減っている」
苦境に立つサロン
美容関連商品の売り上げは景気低迷期でも安定していることが多いものの、美容サービスは「必要不可欠ではない支出」と見なされるというのが、市場調査会社IBISワールドのシニアアナリスト、マーリー・ブロッカー氏の分析だ。
「これらの輸入品への関税は、海外の製造業者から直接購入する場合でも、米国内の卸売業者から購入する場合でも、サービス提供者のコストを直接押し上げる」と同氏は言う。
ニールセンIQの調査によると2022年、米国の黒人消費者によるヘアケア製品への支出はおよそ22億9000万ドルだった。
だが価格上昇により、一部の黒人女性はサロンに行く回数を減らしている。ノースカロライナ州ローリーに住むデイラ・フライさん(27)は通常、1年に少なくとも5回はヘアサロンの予約を入れるが、今年はこれまで1回しか行っていない。
「ここ数年で何でもかんでも高くなっているので、最近は縫い付け式エクステよりも編み込みを選んだり、自分の髪を活かすことが増えた」とデイラさん。英食品・家庭用品大手ユニリーバの「シアモイスチャー」や、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の「パンテーン」など、ナチュラルヘア用製品の価格上昇にも気づいている。
顧客の訪問回数の減少は、サロンやヘアケア用品店に影響を与えている。
ディオンヌ・マクスウェルさんは今年初めまで、ジョージア州ダラスの小さなヘアケア用品店でウィッグ、編み込み用ヘア、シャンプーやコンディショナーを販売していたが、来店者が減少したため5月に閉店。自宅に事業を移転した。
現在ウーバーイーツやティックトック・ショップ、ウォルマートからの注文に頼って事業を維持しているが、そうした売り上げも大きく落ち込んでいるという。
「広告に使う資金がない。十分な収益が入ってこないからだ」とディオンヌさんは述べた。
卸売業者との価格交渉も頭痛の種だ。以前は1回の注文で30パックずつ購入できていたが、現在は110パックの大量まとめ買いを要求される。
「この2カ月、ほとんど手元資金で請求金額を支払ってきた。入ってくるお金はほとんどなかったから」とディオンヌさんは打ち明けた。
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