黒人女性向け美容業界にもトランプ関税が直撃、安価だったウィッグのほか、編み込み式エクステに用いられる付け毛や接着剤の価格が急騰
フィラデルフィアで低刺激性の編み込み用ヘアを販売する会社のオーナー、カディジャ・ドッソさん(30)も中国からの出荷遅延による影響を受けている。
トランプ氏が145%の対中追加関税を発表して間もない6月、カディジャさんは中国製編み込み用ヘア5万ドル相当を航空貨物で入手するまでに1カ月以上待たなければならなかった。
「税関を通すには、商品の具体的な内容、つまり正確な素材、使用目的を詳細に申告する必要がある」とカディジャさんは話した。「問題の一因は、これまで何年も使ってきた説明文が十分に具体的ではなかったことだ」
コスト上昇
米シンクタンク、ブルッキングス研究所のシニアフェローであるアンドレ・ペリー氏の見解では、トランプ関税はダジアさんやドッソさんら黒人経営者へ特に重大な影響を与えている。
ペリー氏によると「黒人経営者は、起業の際の資産が少ないことが多い」という。富の格差のせいで、特に消費財やヘアケアサービスのような利益率の低い事業に携わる黒人起業家は、関税に利益を圧迫され、経済的に非常に不安定な立場に置かれることになる。
ジョージア州立大学のサプライチェーン・オペレーション管理助教、シナ・ゴララ氏の見方では、関税によるコスト上昇は法人税のようなものだ。「外国の製造業者がその負担を被ることもあり得るが、大半の場合、国内の購入者や消費者にもかなりの影響が及ぶ」
カリフォルニア州の美容関連用品店創業者のダイアン・バレンタインさん(55)は、中国に145%関税が課されてからすぐ、その影響を初めて実感した。ロサンゼルス港で2万6000パックの編み込み用ヘアを入手するため、30万ドルの支払いを迫られた。
「この段階でこれほどの損失を被るなんて壊滅的だ」とダイアンさんは嘆いた。
以来、編み込み用ヘアと紐で結ぶタイプのポニーテール用エクステの価格を20%値上げ。従業員4人を解雇し、穴埋めのため州内2店舗で1日16時間働いている。