【朝ドラ】やなせたかし、意を決して応募した漫画がグランプリ受賞も妻「うれしくない」ワケ

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私たちからすれば『アンパンマン』の作者が「手のひらを太陽に」という誰もが知る曲の作詞を手がけたことに驚かされるが、当の本人からすれば、膨大な曲を作りながらも、みんなが知っているのは一曲だけ、という悔しさがあったようだ。

このバイタリティこそが、やなせたかしの真骨頂といえるだろう。

漫画家のイベントに呼ばれずに拗ねる

いずみたくとの出会いによって、作詞活動にも本腰をいれたやなせだったが、あくまでも本業は漫画家だ。

それにもかかわらず、漫画のほうでなかなか結果につながらずに苦しんでいる。時には、周囲の活躍に焦ることもあった。当時の心境をこんなふうに綴っている。

「漫画集団世界旅行というのにも誘いの声さえかからなかった。自分が完全に無視されている、存在していないとおなじ、ということが身にしみた。 ぼくより十年も二十年も年齢の下の連中が、花形としてもてはやされているのに、湯吞み茶碗の絵を描いたりしてごまかしながら生きているのはみじめだった」

そんなときに、やなせは『週刊朝日』が半年連載の百万円懸賞漫画を募集していることを知る。周囲の売れっ子漫画家が世界旅行に出かけている間に、自分はこの懸賞漫画に没頭することを決めた。ただ、すでにプロとして活動しているので、ふとこんな不安がよぎったようだ。

「募集要項はプロアマ不問だったが、ぼくも一応プロになっていたから、応募して落ちたら恥かしいと思って心がひるんだ。完全に落ちるなら解らないからいいが、もし三位か佳作に名前が出ると物笑いの種になりはしないかと恐れた」

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