「消費離れ」の20代、理由と本音はここにある 「欲しいモノ」はある!「その対象」が違うだけ

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ネット上に氾濫する情報によって、未体験のことでも体験した、知ったつもりになる。そうした「既視感」も、若者たちの消費意欲を減退させる要因になっています。

3.「既視感による意欲減退」+背伸びしない

たとえば「若者の車離れ」が指摘されていますが、車に乗ってみないと本当はドライブする快感やスピード感、移動する楽しさはわからないはずです。

しかし、彼らは多くの情報に触れているので、「もう車のことは知っている」「車に大金をかける必要性を感じない」と判断し、消費対象の選択肢から消去してしまうのです。海外旅行やグルメに対しても、こうした「既視感による意欲減退」があると思います。

また、さとり世代は「値段が高い=価値がある」という価値観が崩壊した世代とも言えるでしょう。高い値段に振り回されたりせず、自分にとっての価値を突き詰め、自分が満足するモノ、コトを求めてきた人たちです。

カネをかけずに充足する習慣があるので、「背伸び」をしない。こうした20代の出現は、日本経済に与える影響としては力強さが足りないかもしれませんが、社会が成熟ステージに入ったサインとも言えるでしょう。

欲しいのは「SNSで話題にしやすい」モノ・コト

「車、酒、海外旅行」に興味がないとはいえ、20代も消費しますし、欲しいモノも当然、あります。それは何かと言うと、「SNSで話題にしやすい」モノ・コトです。具体的に言うと、象徴的なのは下記の3つのような消費です。

1.「おつきあい消費」

「男子会」「女子会」でのカフェの集まりや飲み会への参加。いろいろなグループと満遍なく、ちょこちょことつながるために、回数多く細かく消費しています。

2.「いいね!消費」「思い出消費」

SNS上で「いいね!」をもらうために、わざわざ高尾山を登山して友達との写真をアップしたり、みんなで思い出を作るために熱海へ小旅行したり。「モノよりコト、楽しい体験」を重視し、そのための消費はいといません。

3.「ネタ消費」

「友達にウケるため」あるいは「笑いをとるため」に、人が行かないような場所へわざわざ出掛けて写真をアップしたりする。すべての前提は、ソーシャルメディア上でのシェアと友達の反応です。

これら3つのように、SNSによって構築された人間関係を円滑にし、メンテナンスするための「SNS消費」が圧倒的に目立つのです。

「20代に商品が売れない」「20代がおカネを使ってくれない」と嘆くだけでは何もビジネスは始まりません。20代には20代の「事情」があり、彼ら彼女らはその価値観に基づき、おカネを遣っているわけです。

「世代論」を知れば、20代のさとり世代は「そもそも物欲が少ない」「背伸びした消費をしない」「『安かろう、そこそこよかろう』で大満足」「おカネを遣うのは『SNSで話題にしやすい』モノ・コト」といったヒントが見えてきます。私が「世代論は『最強のマーケティングの武器』である」と言うのも、そのためです。

「世代論を知らずに、モノづくり、マーケティングを語ることはできない」「世代論は、『違う世代』を理解し、うまく付き合うための『最強の武器』にもなる」

世代論を知れば知るほど、この言葉の意味がわかっていただけるはずです。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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