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日本に「見捨てられる」外国人の命を救う最後の砦として28年間活動するNPO…医師や看護師はボランティア「人種や国籍にかかわらず尊厳を守る」

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しかし当然、相談をして終わりではない。相談会で病気の可能性が発覚した人に対し、どの病院にかかるか、だれがその費用を負担するか、という調整が必要になる。

病院の中には医療費の支払いが困難な人に対し、医療機関側が公的補助や寄付金によって医療費の一部を減額する「無料低額診療所」というところがある。

相談会ではそうした医療機関などの協力も受け、急性虫垂炎(盲腸)で手術した男性の手術費用105万円の一部や、双子を出産した女性の帝王切開費用20万円など、年間500万円以上にも上る医療費の支援をしてきた。しかし高額ながんの手術などでは数百万円以上がかかることもあり、支援が難しいことも多い。

長澤氏らはそうした場合に在留資格の申請をすることもあるが、「病気が進行しているため、在留資格が下りるのが亡くなる直前や、亡くなった後になる。まるで『在留資格がない人は、死んでもよい』と言われているようだ」と話す。

苦しい資金繰り

特に仮放免は、病気などが理由で施設の外での生活が認められるにもかかわらず、医療を受けられる公的保障はない。つまり国は、民間の支援者に医療費などのセーフティーネットを頼ることを前提としているのだ。

しかし、団体の資金繰りは厳しい。2024年度の経常収支は助成金の申請を一時的に見送ったこともあり、1583万円の赤字となった。寄付金を募るためには、どうしたらよいか。長澤氏らは頭を悩ませている。少しでも活動内容を知ってもらえればと、昨年からホームページで活動内容をまとめたニュースレターを公開するようにしている。

取材日は折しも、7月20日投開票の参院選の直前だった。事務所の外では選挙カーからの声が響いていた。参院選の結果は「日本人ファースト」をスローガンに掲げる参政党が躍進。排外主義の懸念が広がっている。

そうした世情に対し長澤氏は、キリスト教の「善きサマリア人」のたとえを用いて、外国人を支援する理由を話した。今年ローマ教皇に選出された、レオ14世が5月の一般謁見で触れたテーマでもある。

「エルサレムからジェリコ(現在のパレスチナ自治区の都市)に向かう旅人が盗賊に襲われ、ケガをしているのを見て、あるサマリア人が歩み寄って介抱したという話のように、日本に住む外国人で、どこから来た何者かわからない人であったとしても、苦しんでいる人がいれば、私たちは同じ人間として助けるべきではないだろうか」(長澤氏)

以下では、北関東医療相談会の概要や企業との連携などを紹介する。

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