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日本に「見捨てられる」外国人の命を救う最後の砦として28年間活動するNPO…医師や看護師はボランティア「人種や国籍にかかわらず尊厳を守る」

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施設の外で生活できるとはいえ、仮放免者は働くことを禁じられ、健康保険に加入することもできない。当然、日々の生活はままならず、友人や支援者に生活を頼ることとなる。

そのため多くの仮放免者は、世話になっている人たちに負担をかけまいと、具合が悪くても医療機関の受診を遠慮しがちになる。気づいたときには命の危険が迫っている、という事態も珍しくない。

コロナ禍でも行われた医療相談会の様子。診療科ごとに分けられたブースに、多くの人たちが相談に訪れた(記者撮影)

長澤氏が医療相談会を始めたきっかけは、在留資格のない人に典型的な、こうした事態を目の当たりにしたことにある。

30年ほど前、日本では多くの日系ブラジル人やフィリピン人が働いていた。当時は労働力の確保が優先で、在留資格は二の次だったという。彼らの中にはカトリック信者も多く、長澤氏は教会を通じて彼らとの交流があった。

そんな中、「よく知るフィリピン人に進行がんが見つかり、間もなく亡くなってしまった。在留資格がなく健康診断を受けておらず、大きなショックを受けた」(長澤氏)。

せめて健康診断さえ受けられていれば、彼の命は救えたのではないか。そう思った長澤氏は、無料の健康相談会を立ち上げた。医師や看護師などの関係者を募り、1997年に群馬県で「外国人のための医療相談会」を発足させた。

相談会に協力する医師らはボランティア

健康相談会は今も続き、これまで3000人以上が相談会を訪れた。今年6月には70回目が開催され、内科・産婦人科・精神科・小児科の医師をはじめ、看護師やソーシャルワーカー、英語・フランス語の通訳らが集まった。

医師や看護師、ソーシャルワーカーはいずれも10人前後、歯科衛生士4人、通訳8人、弁護士やレントゲン技師、さらに一般ボランティア約20名が加わり、総勢およそ70人で相談会を支えている。

今年6月の会場となった群馬県太田市には、埼玉に住むパキスタン人など34人が集まった。このうち病院への紹介状が出た人は12人に上った。そのうち60%が肥満、50%が虫歯、43%が高血圧の状態だった。

参加者の半分は仮放免者で保険証を持っておらず、普段から医療機関にかかることが困難な人は全体の97%に及んだ。相談会に訪れた人の中には、日本人もいた。

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