波乱の「切り餅」裁判、サトウ食品はなぜ負けた
「証拠の偽造は天地神明に誓ってやっていない。汚名は何としてもそそぎたい。上告の目的はそれに尽きる」。サトウ食品工業の佐藤元社長が現在の心境を語った。
切り餅の切り込みの特許権を侵害されたとして、業界2位の越後製菓が業界首位のサトウに損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、知的財産高等裁判所は3月22日、サトウに約8億円の損害賠償などを命じる判決を下した。サトウはこの判決を不服として、4月2日に最高裁へ上告手続きを取った。一審はサトウの完勝だったが、二審の知財高裁は昨年9月、中間判決の形でサトウの特許侵害を認めていた。
中間判決とは、争点の一部に関し裁判所が裁判の途中で判断を示す手続きで、「中間判決には裁判所自身が拘束され、判断した争点の蒸し返しは許されない」(知財訴訟に詳しい上山浩弁護士)。実例も極めて少ない。
だが、サトウ側は代理人弁護士を変え、新たに大量の証拠を提出して捨て身の挽回を狙った。
中間判決後の強攻策だったため、「(証拠や主張を受け付ける)時機に後れた主張」とし、新たな証拠はいっさい検討されず、結果も覆らなかった。そのうえ、今回の判決には通常は公開されない和解協議の経過がるるつづられ、特許侵害製品の製造設備の廃棄まで命じるという、この類の訴訟では異例の厳しい結末。
中間判決後にサトウの代理人に就任した西村あさひ法律事務所の矢嶋雅子弁護士は、「判決文には巧妙にサトウが不誠実に見えるように書かれた部分が多く、事実にないことまで記載がある」と憤る。
浮上した証拠偽造疑惑 二審の判断に影響か
今回知財高裁は、弁論を1回開いただけで審理を終結。一審の記録と双方が追加提出した書面や証拠だけで逆転中間判決を出している。その原因と思われるのが、サトウによる「証拠偽造疑惑」だ。