配送業者3人が熱中症で死亡…世界で頻発する異常気象。酷暑の中での配達で「死がよぎった」ウーバー配達員の”本音”

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ここで歯痒いのが、フードデリバリー業界における「暑さ対策の取り組み方」だ。

2025年6月1日から熱中症対策が義務化されたことは周知の事実だが、正直に申し上げて、フードデリバリーの現場は「義務化の死角」になっている。いったいなぜか?

義務化された熱中症対策に「死角」が生まれる理由

出前館では2025年6月、配達員に向けて題目「熱中症予防策ポイント4選」と書かれたメールが配信された。内容は、水分と塩分をこまめに摂取する。通気性と吸汗速乾性のある服装で配達をする。適度な休憩を取る。バランスのいい食事と睡眠を意識する……。

ウーバーでは2025年7月、配達員に向けて「熱中症対策のポイント」がメールで配信された、内容は、水分をこまめに取る。衣服を工夫する。休憩をこまめに取る……。

メール
ウーバーから配達員へ送られたメール(著者撮影)

どちらも大切な情報であることは間違いない。しかし、やや杓子定規な印象を受ける。このように私が感じてしまうのは、配達員の暑さ対策が企業主体ではなく、本人の自己判断と自己対策に大きく依存していること。この現状を知っているからだろう。

ご存じの通り、配達員はウーバーや出前館の従業員ではなく、あくまで個人事業主として働いている。稼働日や稼働時間は、すべて配達員の自己判断。これは視点を変えると、ウーバーや出前館などのフードデリバリー企業は、配達員の体調管理が難しいことを意味する。

さらに厄介なことに、配達員の報酬は時給制ではなく、こなした仕事の量によって決まる。つまり配達員の立場からすると、熱中症対策で休めば休むほど「報酬の減額」につながる。報酬の減額は生活苦につながり、生活苦は無理な労働につながりやすい。つまり私たち配達員を守ってくれるのは現状、企業でも法律でもなく、配達員本人でしかないのだ。

これは補足だが、過去にウーバーでは一定の条件を満たした配達員に「暑さ対策グッズ」を抽選で支給していた。私は首にかけるタイプの扇風機。水に濡らすと冷たくなる冷感タオル。通気性と吸汗速乾性の高いロゴ入りのTシャツ。抽選に当たり、3点の暑さ対策グッズが無料でプレゼントされた。

暑さ対策グッズ
ウーバーの抽選で当たった暑さ対策グッズ(著者撮影)

しかし私が知る限り、数年前からこの取り組みは行われていない。きっとウーバー側にも様々な事情があるのだろうが⋯⋯。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事