「スリーアウトチェンジ」の頃から様相一変、石破首相が見せる"意外すぎる粘り腰"のカギは《半世紀前》にあった
さらに興味深いのは、JNNの世論調査で「自民党の敗北理由」について46%が「自民党に期待できない」と回答し、「石破政権に期待できない」の20%を大きく上回っている点だ。
昨年の衆院選に続いて参院選でも自公が過半数を割った理由は複数ある。物価高やそれに対する政策の後手後手感、加えて「政治とカネの問題」によって自民党が信用をなくしたことも、大きな原因に違いない。実際に6月に行われた都議選で自民党が大敗したのも、都議会自民党の裏金問題が影響した。
そうした表れが、7月25日夕方に首相官邸前で行われた「石破辞めるな!」デモかもしれない。参加者の多くは自民党支持層ではなく、石破首相を積極的に支持するわけではなかったようだ。にもかかわらず、こうした動きが表れるのは、彼らが「よりマシな政治」を求めているからだろう。その反面、野党のリーダーへの期待の薄さが感じられるのも興味深い。
石破政権が生き残る唯一の道
石破首相も8月に入り、粘り強さを見せている。
8月4日と5日に開かれた衆参予算委員会では、ほとんど資料を見ずに答弁した。6日の広島平和記念式典での演説は、2年前に平和祈念館を訪れた印象や、「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」という正田篠枝氏の歌の引用など、石破首相の「平和への思い」が強く盛り込まれたものになった。
石破首相の政治の師である故・田中角栄元首相は生前、「戦争を体験した人間が政治にかかわっている間は大丈夫だ。しかしそういう人間がいなくなったとき、日本は危なくなる。だから勉強しろ」と周囲に述べていた。
筆者は同じ話を故・藤井裕久元財務相からも聞いた。その藤井氏が何より懸念していたのは、日本の右傾化だった。そして先月の参院選では、核武装をほのめかす候補が当選するなど、その兆候が見られている。
石破首相が意欲を見せた「戦後80年談話」は閣議決定が見送られ、石破首相の個人的メッセージとなる予定だが、8月6日の広島での演説はその布石となるものだろう。そして9日の長崎平和祈念式典での演説や15日の全国戦没者追悼式での演説を通じて、その完成形が見えてくるのではないか。そして、平和を訴え、左派も含めて国民の過半数を包摂することこそ、石破政権が生き残る唯一の道だといえるだろう。
アメリカの追加関税をめぐっても“粘り”を見せている。赤沢亮正経済再生担当相は5日から9日まで訪米し、1日に発動された大統領令との齟齬について確認するとともに、自動車関税の早期引き下げを求める。
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