【産業天気図・建設機械】欧州、BRICsを中心に建設需要旺盛で「快晴」続く
07年度の建設機械業界は、前半、後半とも06年度に続き、全般的に順風満帆となりそうだ。理由は、欧州に加え中国やロシアなどBRICsを中心とした好景気が続き、建設機械の需要がなお旺盛なため。さらに世界的な資源高を受け、高単価の鉱山機械の需要が拡大。建機メーカー各社の今08年3月期業績については、これらの需要が拡大している地域や機種についての取り組みがしっかりしているところほど好業績をあげそうだ。建機の主力市場である北米向けの売り上げ比率が高い企業は、在庫調整が長引くことで成長が一時的に鈍化する局面もありそうだが、大崩れはないもよう。
さらに為替についても、各企業はやや円高を想定していたが、現状ではむしろ円安。このことから、前回(3月)、米国の調整、為替の円高シフトを考慮しつつ前半が「快晴」、後半が「晴れ」としていた予想を通期で「快晴」に改める。
建機メーカーの団体である日本建設機械工業会が4月末に発表した2006年度の建設機械出荷金額(国内生産分)の総合計は2兆3006億円。前年同期比で19.8%もの大幅増加となった。これで増加は5年連続で、出荷金額が2兆円を突破したのは初めてのこと。内訳は、国内が8471億円(前期比11.8%増)、外需が1兆4535億円(同25.0%増)。外需が出荷額の過半を超える63%強を占め、成長の牽引役となった。バブル崩壊直後の1990年度には内需が約80%を占めていたものが、大きく様変わりしているのがわかる。
特に、国内首位で世界2位のコマツ<6301.東証>、同2位で世界3位グループの日立建機<6305.東証>の海外売上高比率はそれぞれ74%、69%と、すでに成長の舞台は海外にある。しかも、世界の建機需要の約30%を占める米国市場が住宅バブル崩壊の影響で成長が鈍化しているにもかかわらず、両社に関しては他の地域の旺盛な需要で埋めて余りあるほど、売り上げ地域的にバランスがとれた構造になっている。
例えば、コマツの場合、主力の油圧ショベルを含む建設・鉱山機械の07年度売り上げ予想は、北米地域だけに限ると約15%ものマイナス予想。その結果、北米の地域別売上高構成比率は前期の30.6%から27.1%に落ち込むが、逆にロシアなどを含めた欧州が19.9%から21.8%へ、中東も9.9%から10.7%へ、中国も6.9%から8.6%へと上昇、北米の落ち込み分をカバーする形だ。
各社の業績を下振れさせるリスクがあるとすれば、主に2つ。1つ目は各社が需要予測を高めに見積もること。中でもいわゆる「中国バブル」は業界でもよく話題になる。だが、直近では絶好調が続く。さらに各社はバブル崩壊後からの長い苦難の時を経て、予測に大風呂敷を広げていない。在庫管理面でも進歩をとげている。全世界の需要予測ではむしろ各社とも保守的な予想が目立つ。2つめは円高リスクだが、これも各社とも1ドル=115円、1ユーロ=150円予想という企業が多く、現段階ではむしろ増額要因となることが必定だ。
今後、万一需要が落ちることがあっても、中国やインドなど新興国のインフラ需要は旺盛。30~50年の長い目で見れば、もし調整があっても一時的なものにとどまる、というのが一致した見方だ。
【福井純記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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