緊縮財政は「経済学」という名の政治的武器なのか 資本主義を守るための「反民主主義」理論 巧妙なメカニズムで階級対立を飼いならす
緊縮策は、財政、金融、産業からの経済の防護柵と見てよく、社会関係の不可侵性を保証するものとなる。
歳出と賃金に構造制限を課すことで、社会を生きる大多数にとって、「汗水たらして働き、貯蓄する」ことは、その強靭性以上の何かを課す。すなわち、それが生き残る唯一の道だからだ。
資本主義の崩壊に慄いたブルジョアたち
この物語は、最も深刻な資本主義の危機を引き起こした第一次世界大戦をもって始まる。
戦中、戦後、ヨーロッパ諸国に住む大半の人々にとって、好むと好まざるとにかかわらず、資本主義の終焉は、戦争による荒廃と国家経済計画の抜き差しならぬ結果として目の前にあった。
イギリスの労働組合指導者ウィリー・ギャラチャーは「戦前は永遠と思われた産業秩序が、今や世界のあらゆる国で根こそぎ揺らぎつつあった」と語った。
イタリアの名うての自由主義経済学者ルイジ・エイナウディも同様の脅威を抱いており、「資本主義体制と呼ばれるものを地に叩きつけるには、ほんのちょっと腕を動かすだけで十分に思われた。(中略)平等支配は間近に思われた」と発言した。
こうしたブルジョア学者の発言は、労働運動「Ordine Nuovo(オルディーネ・ヌオーヴォ:新秩序)」の大御所パルミーロ・トリアッティの熱とも半ば重なって見える。
トリアッティは、「人は旧秩序に反発し、自らを新たなやり方で位置づけ、共同体を新たな形で編成し、まったく新たな社会の建造物建設を可能にする新たな生活関係を築く必要を感じている」と語った。
この反資本主義への集団的な覚醒は、戦時中に私企業所有者による資本蓄積が途絶した異常な政策によって促進された。
政府は、戦時生産の膨大な規模に対処するため、軍需、鉱山、海運、鉄道といった主要産業を集団化し、労働者を直接雇用してコストと供給を規制した。
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