"文系廃止"騒動が映す、国立大改革の性急さ 改革への戸惑いが騒動の引き金に
今回の通知のベースとなったのは、文科省が2012年に発表した「大学改革実行プラン」。教育の質的転換や入試改革、ガバナンス強化などが盛り込まれたものだ。国立大に対しては、学長の権限を強化するほか、大学の強みや特色、社会的役割などの再定義を求めている。
文科省が進める改革プランに呼応し、山口大や長崎大、高知大など多くの大学が学部を再編、地域性を生かした新学部を生み出した。
このように2004年の国立大学法人化以降、文科省は大学独自の裁量を増やす一方で、法令改正や通達、予算などを通じて関与を続けてきた。同省による今回の通知も、国立大が2016年度から2021年度までの中期計画を策定する際の、検討材料となっている。
10月20日に公表された、各大学の第3期中期目標・中期計画の素案でも、人文社会科学系学部の見直しやゼロ免課程の廃止を盛り込んだ大学は、約半数にも及んだ。
予算削減から後手の対応に
早急な改革を迫られる国立大だが、その懐事情は厳しい。法人化以降、国からの運営費交付金は毎年1〜1.3%が一律で削減され、削減幅は10年間で10%超に及ぶ。
各大学は、科学技術研究費などの補助金や産学連携による受託研究収入、寄付金などの獲得に乗り出したが、不足分の補填には至っていない。その結果、教員数の削減など、対応は後手に回りがちだ。ある国立大の首脳は「予算の削減ペースが急すぎる」と不満をこぼす。
大学間の競争も激化しそうだ。2016年度以降の予算では、積極的に改革を進める大学に対し、運営費交付金を重点的に配分する方針が示されている。現場から「予算削減は限界」との声も上がる中、どう改革を進めるのか。文科省、大学ともに、改革への本気度が問われている。
(「週刊東洋経済」2015年10月31日号<26日発売>「核心リポート02」を転載)
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