日本の子どもの「幸福度」36カ国中14位、順位上げるも深刻な「自殺率」と「格差拡大」 生きづらさの背景に「少ない選択肢」「競争激化」

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日本は他国が学力スキルを下げる中、76%と前回RC16の73%からほぼ横ばいで推移しましたが、日本のデータを見ても家庭の社会経済的背景による学力格差は明らかに大きくなっています。

家庭の経済状態がよい子はすごく伸びている中で、平均点より低い子への手厚い支援が必要な状況です。経済格差と学力格差は不登校や自殺にもつながります。よりつらい状況の子どもたちに注目した政策はもちろん、学校現場でも先生1人ひとりの行動が変容していく必要があるでしょう。

――具体的にどのような取り組みが必要でしょうか。

日本の子どもたちの学力は全体で見ると上がっていますので、先生方も上のレベルに合わせてしまいがちかもしれませんが、クラスの中で勉強が遅れている子たちがわかるように授業を作っていかなければいけないと思います。

東京都足立区のように個に応じた取り出し授業などをやっている自治体もすでにありますが、そうした支援もより広い範囲で行う必要があるでしょう。先生方はお忙しいですので、外部人材を活用して補講を行う方法もあります。ただ、補講などは“居残り”のようなイメージを与える場合がありますので、子どもの自己肯定感が下がらない形でやる必要があると思います。

例えばオランダでは、1人ひとりが違う勉強をしていて、それぞれの成長を評価する教育になっていると聞きます。日本もこれだけ格差が広がってきていますので、授業スタイルや評価を大きく変えていく必要があるのではないでしょうか。

――社会スキルについては改善が見られ、日本はデータがある41カ国中29位とのことですが、この状況をどうご覧になりますか。

少なくとも平均くらいまでにはなってほしいと思います。友達がいるかどうかという点はおそらく不登校や自殺率にも関連していますので、改善が望まれます。

多くが「優等生向け」、「最もつらい子どもたち」への政策を

――RC19は前回のRC16から5年ぶりの報告書です。この間に日本では子どもを巡る動きとして、こども家庭庁の発足や高校授業料無償化などさまざまな変化がありました。

経済的な事情で進学を諦めずにすむという点で、教育の無償化はいい変化だと思います。しかし、みんなが学力志向が強いわけではありません。

こども家庭庁もそうですが、どちらかというと日本の政策は優等生向けのものが押し出されているように思います。例えば、子どもの意見を聞こうという機会が増えていて、優等生はそういう場で発表などを行いどんどん経験を積んでいますが、一方で、積極的に意見を述べられない子やそもそも学校に行けず意見を表明する場につながれない子もいます。平均より上の子だけでなく、平均より下にいる子、最もつらい状況にいる子への政策を進めるべきだと思います。

――子どものウェルビーイングの向上のために、学校現場には何が求められるでしょうか。

文科省も言っていることですが、「楽しい学校にする」ことが大切ではないでしょうか。居場所という機能としての中学校や高校があり、そこが子どもたちにとって生き生きできる場所であることが求められていると思います。

今は、学校でも「学力をつけることが一番大事」というレトリックは強調されなくなってきているとは思います。しかし、これも繰り返しになりますが、大学受験がエンドポイントであることは変わっていませんし、増加する総合型選抜などに対応するための活動をしなければならなくなっています。こうした受験の仕組みから変えていかなければならないと思っています。

(文:吉田渓、注記のない写真:buritora/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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