日本の子どもの「幸福度」36カ国中14位、順位上げるも深刻な「自殺率」と「格差拡大」 生きづらさの背景に「少ない選択肢」「競争激化」
――文科省の調査でも、2024年に児童生徒の自殺者数が過去最多となりました。不登校も過去最多を更新し続けています。背景としてどのようなことが考えられますか。
子どもの自殺や不登校の要因については、立証されているわけではありませんが、どちらかといえばコロナ禍よりも貧困や格差の影響が大きいのではないかと見ています。今、子どもの貧困率は下がっており、平均的に見ると経済状況もよくなってきています。しかしその分、子どもたちの格差が大きくなっていると言えます。
周りの経済状況がよくなっている中、自分の環境が厳しければ精神的なつらさにつながってくることもあるでしょう。経済状況と自殺を結びつけるのは大人のケースでも難しいのですが、失職や健康状態の悪化などが絡んで貧困が起こる場合もあります。そうしたことを踏まえると、貧困や格差も自殺の要因の1つになるのではないかと思います。
――おっしゃるように因果関係を明らかにするのは難しく、1人ひとりの背景や理由も異なりますが、学校や社会ではどのような取り組みが必要だと思いますか。
現在の対策の多くは、自殺願望のある子や精神状態が悪い子に対する窓口を設け、相談事業を行うというもの。もちろんこれも大切なのですが、そこに至るまでの対応がなされていないのが現状です。なぜ、そういった子たちが毎日楽しく学校へ通えないのかといったところへの対応が手つかずではないでしょうか。学校や教育がどうあるべきかを考えなくてはいけません。
例えば今、通信制高校を選ぶ生徒が増えているのは、一般的な学校になじめない子が増えているということもあると思います。とくに日本は中学校以降の選択肢が少ないことが、生きづらさにつながっているのではないでしょうか。
教育現場でも「インクルーシブ教育」や「探究学習」など、いろいろな取り組みも出てきていますが、エンドポイントが大学受験であることは変わっていません。定員割れする大学が出ている一方で、受験は学力だけでなく経験も含めた競争が激化しています。こうした状況を全部見直す必要があるのではないでしょうか。大学以外の選択肢をどう充実させていくのか、若者、とくに高卒のキャリアパスについてまで考える必要があると思います。
自殺対策でも不登校対策でも、いかにその数を減らすかという対策になりがちですが、必要なのは根本的な議論です。議論なしに単に給付金を出すだけではなく、子どもが育つ環境や社会全体を変えていく必要があるでしょう。
「社会経済的背景による学力格差」が大きい日本
――「身体的健康」は、RC16に引き続き対象国の中で1位です。
身体的健康は死亡率と過体重の2つが指標となっており、とくに肥満は他国があまりに値が悪いこともあり、日本はたまたまいい順位なのだと思います。ただ、2024年度の文部科学省「学校保健統計」によれば、痩せも肥満も増えており、この日本の状況は受け止めなければいけないでしょう。
とくに痩せに関しては、本人も含めて危機感を抱きにくいと思うので啓発していく必要があるのではないでしょうか。過体重の割合も16.3%と少なくはありませんし、問題意識を持つべきかと思います。
――「スキル」は、「学力スキル(数学・読解力で基礎的習熟度に達している15歳の割合)」と「社会スキル(すぐに友達ができると答えた15歳の割合)」という2つの指標を基に順位付けされています。日本は前回の27位から12位へと順位を上げましたが、この結果についてはどう捉えればよいでしょうか。