夏場にモバイルバッテリー発火事故が急増する理由。手持ちの製品がリコール対象か確認する方法と安全な選び方
同時期に、別の深刻な問題も発覚した。電池セルサプライヤーが耐熱材を安価なプラスチックに無断変更していたことが判明。Ankerは中国で71万台、Romossは49万台という大規模リコールを実施。Romossは6カ月の生産停止に追い込まれた。
中国全体では120万台以上がリコール対象となり、日本でもAnker製品の一部がリコール対象となるなど影響が出た。大手メーカーでも、サプライチェーンの管理が難しい時代になっている。

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)のデータがある。リチウムイオン電池搭載製品の事故は5年間で1860件。そのうち1587件、約85%が火災になっている。

月別で見ると興味深い傾向が出てくる。6月は201件、7月212件、8月が228件でピークを迎える。気温と比例している。
メカニズムはこうだ。電池内部の電解液は可燃性で、高温で化学反応が加速する。正極と負極を隔てるセパレータが熱で縮むと、ショートが起きる。大電流が流れ、発火に至る。
JAF(日本自動車連盟)の実験によると、真夏の車内は短時間で50度を超える。ダッシュボード付近なら70度に達することもある。2023年8月、熊本で車内放置のモバイルバッテリーが発火したのも、この高温が原因だった。
製品別では、モバイルバッテリーが2022年の56件から2024年には123件と2倍以上に増えた。2024年の事故発生件数は電動アシスト自転車は36件、ポータブル電源は41件、ノートパソコンは38件、スマートフォンは24件と、身近な製品で事故が起きている。
今すぐできる3つの対策
NITEや国民生活センターが推奨する対策を整理した。
まず高温を避けることだ。車内放置は特に危険だ。直射日光が当たる場所、ポケットや布団の中も避けたい。長時間肌に密着させると低温やけどのリスクもある。リュックの背中側やノートPC、充電中のスマホと一緒に入れるのも危険だ。
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