未婚化、少子化、そして地方創生… 日本が抱える大体の大問題は「県人会」を活用すれば解決できる

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東京へ出てきた「国内移民」として苦労しながらも、成功を目指している、夢を追っている同じ故郷の人同士であれば、共感できる点も多いだろう。地方大学の東京校友会であれば同窓として、郷土料理を囲むように、青春時代に味わった同じ思い出に花が咲き、意気投合するのではないだろうか。

江戸時代の参勤交代は三代将軍・徳川家光によって制度化されたもので、大名が定期的に江戸と自分の領地を行き来する制度だった。この制度は、大名の忠誠を守り、幕府体制を強固にする本来の目的に加え、大名の財力を消耗させ反乱を防ぐ効果も狙っていたようだ。

その結果、江戸の文化が地方へ伝わると同時に、地方の文化が江戸にもたらされるという文化交流の側面もあった。ある地方の大名がほかの地域へ領地替え(転封)した際、以前の領地の技術や文化を持ち込むこともあった。

例えば、山陰の出雲そばは、信州松本藩にいた、そば好きの大名・松平直政が信州のそば文化を出雲に持ち込んだとされている。このような歴史的背景を踏まえれば、現代においても都市と地方の文化交流を促進する取り組みが求められる。

この歴史を参考にすると、今、東京に住みながら故郷とつながりを持ち続ける人々、つまり、東京に長く暮らす移住者が地方を元気にする道筋が見えてくる。外国の大使館が東京に集まっているように、「東京の中の地方」という集まりを“故郷の大使館”と捉えれば、そこにいる人は“外交官”といったところか。

県人会文化に必要な、心のこもった「おせっかい」

とはいえ、単に地方の広報・宣伝部のような仕事を求めるものではない。地方でも少なくなったとはいえ今も見られる、心のこもった「おせっかい」を期待したい。

これは未婚対策でも有効となる。県人会に来た独身男性に「私の知り合いに〇〇県出身の素敵な女性がいるけれど、同じ故郷の君に紹介したいのだが」と、同県人の男性に声をかけるようなシンプルな「おせっかい」だ。

婚活アプリでの出会いが一般的になった今、信頼できる人づてのお見合いは、古い喫茶店や昔の歌謡曲が注目されているのと同様に、「昭和レトロ」の1つとして、若い人にとってはかえって新鮮に映るかもしれない。

もちろん、いろいろな意見があるだろう。「そんなの絶対に嫌」という人に押し付けてはハラスメントになる。そこで、浅草生まれ暮らし続けた女優・沢村貞子さんの言葉が参考になる。

「『おせっかい』とは単なる干渉ではなく、周囲との関係性をより良くするための積極的な心遣い」(『わたしのおせっかい談義』光文社、1986)。

後編に続く)

長田 貴仁 経営学者、経営評論家

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おさだ たかひと / Takahito Osada

経営学者(神戸大学博士)、ジャーナリスト、経営評論家、岡山商科大学大学客員教授。同志社大学卒業後、プレジデント社入社。早稲田大学大学院を経て神戸大学で博士(経営学)を取得。ニューヨーク駐在記者、ビジネス誌『プレジデント』副編集長・主任編集委員、神戸大学大学院経営学研究科准教授、岡山商科大学教授(経営学部長)、流通科学大学特任教授、事業構想大学院大学客員教授などを経て現職。日本大学大学院、明治学院大学大学院、多摩大学大学院などのMBAでも社会人を教えた。神戸大学MBA「加護野忠男論文賞」審査委員。

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