貨物列車「車軸折損」少しずつ見えてきた事故原因 輪軸組立作業の不正行為は折損とは無関係だった
車軸が折れたのは大歯車圧入部で、円周状の傷が付く可能性としては圧入作業時に大歯車内周に車軸をぶつけたことが考えられるが(圧入作業は通常なら機関車メーカーが行うが、設備上の何らかの理由によって作業に慣れていないJR貨物の車両所で実施している)、「経過報告」にそのような記述は見当たらない。
調査で発見されたかじりは顕著であるが、軸方向の傷なのでこれが発端とは考えにくい。可能性としては車軸表面の焼きが戻り、円周方向に金属組織が弱ったことが考えられる。
その例として東海道新幹線開業の翌々年に発生した車軸折損事故がある。車軸の製造履歴を調べたところ、車軸を研磨する工程で停電が発生して機械が止まり、車軸のある幅だけ砥石が長く当って発熱、高周波焼入れで強くした表面の焼きが戻ったことが判明した。
圧入力の過大は経験上問題ないが…
新幹線の輪軸組立作業は、圧入ではなく油圧嵌めで行っているので、かじりが発生することはほとんどない。在来線の輪軸は、車輪を抜く時は油圧をかけて行うが、組立てる時は圧入で行っている。「経過報告」の写真を見ると、大歯車内周面に油圧溝があるので(車軸外周面にも溝があるように見えるが、これは歯車側の溝の跡が残っているだけ)、油圧嵌めが前提かとも思ったが、その位置から判断して抜くための油圧溝だと考えられる。
圧入作業の現場では、圧入力の過小は車軸折損に結び付くため基準値を厳守してきたが、圧入力の過大はかじり発生の可能性はあるものの車軸折損には直接結びつかないことが経験上わかっており、それが今回発覚した不正行為の背景にあった。
かじりの発生やその影響については学術的に解明されておらず、安全確保も含めて現場の経験に頼ってきた経緯がある。決められた基準値も、目的が安全確保か作業標準化か不明確な状態であった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら