度重なる"隠蔽"も影響?「2023年度就航」のはずが2年以上も遅延…大分で復活した絶滅危惧船「ホーバークラフト」。なぜここまで遅れた?

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さらに2025年3月には、前年6月に「地上走行路にいた職員が、ホーバーの風でよろけて転倒・骨折」といった事故が起きていたことが報じられる。

これがホーバークラフトの事故ではなく「社員が骨折した」程度の労災として処理され、詳細に報告を受けていなかった大分県との齟齬を生むこととなった。認識の違いか隠蔽か、判断は人それぞれ分かれるところだが、安全性が第一の公共交通としては、決して褒められた話ではない。

結果、この頃には、「この会社は、ホーバークラフトの安全運航ができるのか?」といった疑問も聞かれるようになり、安全検査どころではなかったのかもしれない。かもしれないと書いたのは、大分第一ホーバードライブに「なぜ安全検査がずれ込んだのか」と聞いても、まったく回答を得られなかったからだ(編集部補:回答があり次第、追記します)。

とにかく、2025年6月23日には、九州運輸局の安全検査に合格。ホーバークラフトの空港連絡航路の「2025年7月26日就航」が発表された。

走り出すホーバークラフト 課題山積み、改善点は?→「返答なし」

ホーバークラフトの大分初上陸を待つ人々
ホーバークラフトの大分初上陸を待ち構える大分の人々(筆者撮影)

ようやく就航に至ったホーバークラフトだが、今後に向けての課題は「山積みというより、もはや“山”」としか言いようがない。

まずは「運航本数の問題」だ。2024年秋に「1日7往復半」(15便)とされていた運航体制は「4往復」(8便)。運航実績を積んでから増便するとはいうものの、空港への連絡便としては、あまりにも少なすぎる。

もともとホーバークラフトの利用者は「年間30万~40万人」と想定されているが、1隻の定員80人・1日4往復だと、全便満席でも20万人少々にしかならない。「1日7往復半」でも到達は微妙で、さらなる増便と利用者増加への取り組みを、どこまで行えるのだろうか。

もうひとつ「冬場の運航」も課題だ。冬場の強風などで、周遊すら運航が安定しなかったのは、先に述べた通り。気候が落ち着いた6月の安全検査に合格しても、また冬場に欠航を繰り返さないのか? といった疑問は、誰しもが持つだろう。

しかし、こちらもまったく回答を得られなかった。何にせよ、ホーバークラフトの安定・安全運航は、冬場でも何とかなるのだろう。

ホーバークラフトの経済効果についての資料
大分県が期待するホーバークラフトの経済効果(大分県資料より)

ホーバークラフトの就航は世界でも2カ所のみと希少価値が極めて高く、遠方の見学客もそれなりにいるはず。大分県では空港へのアクセス改善だけでなく「20年で614億円」という経済効果も見込んでいる。

当初の運航開始見込みからゆうに2年以上、船体の到着から1年11カ月を要したホーバークラフトが、大分の海を安全・快適に航行し、しっかり経済効果を上げることを願うばかりだ。

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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