度重なる"隠蔽"も影響?「2023年度就航」のはずが2年以上も遅延…大分で復活した絶滅危惧船「ホーバークラフト」。なぜここまで遅れた?
大分空港は県都・大分市から60km以上も北東に離れており、連絡バスは1時間程度かかる。さらに九州横断道などの渋滞、霧による速度制限での遅れもあり、予約した飛行機に間に合わないような事態も起きていたという。
しかし、大分市と大分空港の間にある別府湾を横切れば、直線距離にして30km程度。ホーバークラフトは最高40ノット(時速83km程度)で航行できるため、2009年まで運航していた「大分ホーバーフェリー」は大分市内~大分空港間を、たった25分で突っ切っていた。
旧:ホーバー廃止の背景には、大分空港の利用者低迷による採算悪化に加えて「三井造船がホーバー事業撤退・今後のメンテナンス打ち切り」という、どうしようもない事情もあった。
しかし、現在では空港の利用者が増加に転じており、「渋滞ナシでバスより速い、ホーバークラフトを復活させよう!」との声が高まったからこそ、別会社(イギリス・グリフォンホバーワーク社〈以下:グリフォン社〉)の船体を購入したうえで、十数年ぶりのホーバー復活に至ったのだ。


ホーバークラフトは、圧縮した空気を船の真下の「スカート」と呼ばれる部分にためて、水上を飛ぶように前進するという特殊な構造で、条件さえ合えば、陸地も走れる。
大分空港には旧:ホーバーのランプウェイ(地上走行部)が丸々残っており、上陸した船を空港のチェックインカウンター近くまで横付けできるとあって、県も80億~90億円の費用を投じての「ホーバー復活」という賭けに出たのだ。
大分県が検討を開始したのが2019年、タクシー大手・第一交通産業を新たな事業者として選定したのが2020年。この時点では「2023年度中の就航を目指す」としていた。
なぜそこから、何度も予定が変更され、2年も就航が遅れることになったのか……一言でいうと「想定外の事態が頻発したから」にほかならない。これまでの動きを整理してみよう。
イギリス製の新造船、建造が遅れる
2009年まで運航していたホーバークラフトの船体はすでになく、建造を担っていた三井造船も事業撤退によって、新しい船の建造をお願いできない。
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