度重なる"隠蔽"も影響?「2023年度就航」のはずが2年以上も遅延…大分で復活した絶滅危惧船「ホーバークラフト」。なぜここまで遅れた?

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それでもホーバークラフトは、2024年11月の時点で運行開始の直前までにこぎつけていた。

この時点で大分県・佐藤知事は「九州運輸局の許可待ちの状況」「許可が出れば、今月(2024年11月)中の運航開始はまだ間に合うのではないか」と述べており、少なくとも大分県は一刻も早い運航開始を念頭に置いていたようだ。

砂浜に上陸を試みるホーバークラフト

砂浜に上陸を試みるホーバークラフト。一度失敗して海上に戻っている(筆者撮影)

しかし2024年11月には、同年3月に2度発生した事故のうち、7日発生分は「事故と判断せず」未報告、21日発生分は「提出しそびれ」といった理由で、管理省庁への報告が立入検査後にずれこんだことが判明した。

これらの事案は船員法に基づく航海日誌にも記入されておらず、もう一冊の非公式の帳簿に記録されていた。こういった「トラブル隠しの2重帳簿」は、会社ぐるみで浸水を隠し通そうとした「JR九州高速船・クイーンビートル」(2025年2月廃止)と同様の事例であり、しっかりトラブルを報告できる体制作りにも問題があったようだ。

それでも、2024年11月15日の時点で監督省庁(国土交通省九州運輸局)は大分市内~大分空港間、別府湾周遊運航の航路開設を許可した。あとは九州運輸局の安全確認検査、いわば「航路は認める。では、安全・安定して運航できるの?」というお墨付きを貰うことができれば、運航開始日を発表できる。地元・大分の地方新聞をはじめ各紙の見出しには、このタイミングで「ホーバー空港連絡便、遅くとも年内就航!」の文字が踊った。

とどめは「就航率の低さ」「再度の事故未報告」

海上を走行するホーバークラフト
海上を走行するホーバークラフト。水面のブイを何事もなく通過している(筆者撮影)

ところが「ホーバー就航は年内」どころか、また遅れた。最後のネックとなったのが「就航率の低さ」「さらなる事故隠蔽」だ。

空港便に先だって、別府湾を周遊して西大分港に戻るルートの運航を開始したものの、11月・12月という冬場の悪天候で、想定の半分(32便運航予定、16便運航)しか運航できなかった。

いくら冬場とはいえ、運航を開始できても半分程度では、公共交通機関として問題がありすぎる。欠航の原因は同社が定めた独自基準(波高・風力など)をクリアできなかったためといい、安定して空港便の運航ができる体制を整えるのに、また時間を要した。

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