動物園や水族館は、そこが屋外であっても来園者や来館者を含め生き物が「密」に集まる場所ですから、そこには、動物と動物の間、動物と人間との間で、感染症が広がるリスクがあります。
とはいえ、ほとんどの動物園では適切な衛生管理が行われており、来園者や動物の健康に悪影響が出ないように厳重な対策をしています。
今回は、そんな動物園の衛生管理にまつわるエピソードをご紹介します。ある「生き物」が見つかったら迅速に対応しなくてはいけない、というお話です。
念のため死因を調べてほしい
ある動物園の獣医師から電話がかかってきました。
「うちで飼っているワオキツネザルが亡くなりました。老衰だと思うのですが、念のため死因を調べていただけないでしょうか?」
ワオキツネザルは、マダガスカル島に生息する原始的な霊長類です。キツネのような顔立ちをしたキツネザルの仲間で、大きさはネコと同じくらい。リング状に縞の模様が入った長い尾が特徴的です。
この尾の見た目から、和名は「輪尾(ワオ)キツネザル」とされているのです(英語名も、ring-tailed lemurです)。

亡くなったのは、21歳のオスの個体。数日前から食欲が落ち元気がない様子が見られたため流動食を与えて看病していたそうですが、ほどなくして息を引き取ったということでした。