同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第10回)--多様な表彰制度を社員の動機づけに活用

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同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第10回)--多様な表彰制度を社員の動機づけに活用

今回紹介する株式会社ユニシス(本社:京都市)はコンピュータの開発請負を業務とする会社で、主力は開発技術者である。

この会社の表彰制度には、つぎの4つの種類がある。

(1)「優秀プロジェクト表彰」
チーム努力、製品品質がとくに優秀で、他の模範となった者を表彰する。

(2)「優秀社員表彰」
勤務成績がとくに優秀で、当社業績、もしくはプロジェクト・組織活動に大きく貢献した者を表彰する。

(3)「永年勤続表彰」
入社から起算して10年、20年、30年勤続した一般社員を表彰する。

(4)「その他」
会社が優秀であると認めた場合、上記以外でも表彰する。
最近の例として、「社内研究会表彰」「創立30周年特別賞」がある。このうち「社内研究会表彰」とは、会社の支援を受けて活動している研究会(現在4つが活動中)の中から優れた活動があれば表彰するものである。 

私は表彰を、その目的によって次の3つのタイプに分類している。

[顕彰型]
特別に高い業績をあげた個人、またはチーム、部署に対し、その功績をたたえるもの。

[奨励型]
陰で善行を積んでいる人、地道に努力を続けている人などに対し、その努力や姿勢をたたえるもの。

[HR(Human Relations)型]
日常におけるよい仕事(good job)、細かな気配り、ちょっとした工夫などをたたえる「軽い」表彰。
(拙著『認め上手』東洋経済新報社、2009年)

この分類に当てはめるなら、「優秀プロジェクト表彰」や「優秀社員表彰」は[顕彰型]に、「社内研究発表会表彰」は[奨励型]に近いと言えよう。

とくに[顕彰型]は権威があるので社員の目標とされ、受賞者にとっては誇りとなる。それだけに、受賞の機会が均等に与えられ、選考方法も客観的かつ透明であることが望ましい。

同社では「優秀プロジェクト表彰」や「優秀社員表彰」の受賞者選考の際、部長やグループマネジャーの意見を参考にしながら、最終的には役員会で決定されることになっていて、技術系ばかりでなく総務など間接部門が選ばれることもある。

特徴的なのは、候補者を推薦するときには推薦理由が文章で具体的に述べられ、賞状にも受賞理由が詳細に記されている点である。そのため、なぜ選ばれたかが他の社員にもわかり、納得が得られやすい。また、受賞者本人も何を評価してもらえたかがよくわかる。

従業員数48名とけっして大きな会社ではないが、これだけ多様な表彰制度が取り入れられ、社員の動機づけに活用されているのは注目に値する。

おおた・はじめ
同志社大学政策学部教授。日本表彰研究所所長。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。京都大学経済学博士。滋賀大学教授などを経て2004年より現職。著書に『「不良」社員が会社を伸ばす』『認め上手』など多数。

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