「グダグダなプレゼン」しかできない人の習性 それは日本人に植え付けられた呪縛だ

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筆者が学校で授業をする時には、よく「要素をパラパラ並列させないで、大項目3つにまとめてごらん。“3”はマジックナンバー。記憶しやすく、理解しやすい数だからね」なんて話をします。まず「型」を持つことが子どもには大事で、その型は慣れればいくらでも崩せるので、そのように指導しています。

最近は、さまざまなプレゼン本などを参考に、この型が定着しつつあるようです。しかし、「この理由は3つあります」という場合でも、その内訳を聞けば実は②と③は同じ話だったり、①に含まれるべき下位要素が③として突如出てきたりするなんてことも、実はよく直面する話――。

うーむ。これは、論理的思考(ロジカル・シンキング)について、筆者たちが子どもの頃からどの科目・どの授業においても学ぶ機会があまりないことが大きく影響しているようです。あれほどの苦痛を伴って書き上げる「夏の読書感想文」だって、「てにをは」以上に、その文章の構造に踏み込んで指摘がなされることはなかなかありません。結果的に、いつまでたっても論理的思考を意識して話を組み立てる術が身につかないのです。

その⑤「発表なんて練習する必要あるの?」の呪縛

欧米では幼稚園の頃からお友達の前で自分のおもちゃなどを紹介する「Show and tell」の時間があったり、パブリックスピーチの授業があったり、発声を鍛えることを勧められたりします。ひるがえって日本では人前で話すに当たり、コツコツ練習をする習慣はありません。野球なら素振り、サッカーならリフティング、楽器なら発表会に向けて日々楽譜を見て練習と、スポーツや音楽ならコツコツ練習するのが当たり前。それがなぜか発表の練習をコツコツと、なんていうことは子どもの頃から習慣づけられていないわけです。

大人になり、職場においても、なるべくPCに向かって黙って仕事をする、あるいは営業マンなら顧客の前に出て仕事をすることが是とされます。在宅勤務や個人部屋はかなりの例外。「人前で話すからちょっと別部屋」なんて言って練習させてもらえることはまずありません。発表なんていうのは、練習などせずに当然にできてしかるべきもの。そんな考えが背景にあるのではないかと思います。

実はプレゼンにおいていちばん肝心なのは「練習」です。その時間を十分とらずに当日を迎えて撃沈、準備不足を痛感――なんて経験はないでしょうか。子どもの頃から授業で鍛えられていない筆者たち日本人は、当たり前のように練習してきた人たちに比べて、より一層、気合を入れて練習をする必要があります。

以上つらつら書いてきましたが、ではどうすればプレゼンがうまくなるのか。答えは簡単。まずは形式を変えてみることです。日本人の呪縛を逆手に取って考えてみるといいでしょう。

1.文章を短く重要なことを先に話してしまう
2.自由に相手と会話をする、くらいの気持ちで臨む
3.聞き手は、重要と感じたポイントは聞きながらメモを取り、話している間でも質問を。話し手もそれを想定した資料づくりや話法を心がける
4.どんな論理展開をしたいのか、事前に図解などして確認する
5.プレゼン当日に向けて、発表はひとつの重要なコトと理解して、コツコツ練習する

 

ここまで偉そうなことを書いてきた筆者も、日本的教育の呪縛を5つも並べている時点でアウト! なのかもしれませんが、これでかなり、呪縛からは解き放たれるはずです。次回は「古くからの日本文化的背景の呪縛」について考察します。

竹内 明日香 一般社団法人 アルバ・エデュ 代表理事

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たけうち あすか / Aska Takeuchi

東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)にて国際営業や審査等に従事後、独立し海外投資家向け情報発信や日系企業のプレゼン支援を提供して今日に至る。2014年、子どもの「話す力」の向上を目指す一般社団法人アルバ・エデュを設立。法人向けに培ったメソッドを応用し、公教育にアクティブラーニングの授業やカリキュラムを導入、教員研修も提供している。受講者数は5万5000人以上。著書に『すべての子どもに「話す力」を――1人ひとりの未来をひらく「イイタイコト」の見つけ方』、『99%の小学生は気づいていない!? 思いを伝える「話す力」』など。

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