もう「中小企業が潰れる」は通用しない! “最低賃金の引き上げ”は減税よりも効果的な経済政策だ
最低賃金の引き上げが議論される際、必ず企業の、特に中小企業の経営体力が懸念されます。しかし、結論から言えば、その心配は無用です。
最低賃金のイメージは幻想だらけ
まず、厚生労働省の平成26年の調査(データはやや古いものの)によると、最低賃金の1.15倍未満で働く労働者は約420万人です。このうち、従業員100人超の中堅・大企業に勤務する労働者は240万人(うち大企業は130万人)にのぼります。
これは、驚くべきデータです。最低賃金近傍で働く労働者のうち、実に6割近くが中堅・大企業に、約3割が大企業に雇用されていることを示しています。
「最低賃金で働く人は中小企業に集中しており、引き上げは中小企業を直撃する」という一般的なイメージは、実態とは異なります。大企業や多くの中堅企業にとって、最低賃金の引き上げは十分に吸収可能です。
次に業種別の分布を見ると、「最低賃金の引き上げは町工場のような製造業を苦しめる」というイメージもまた、実態とは異なることがわかります。
データ上、最低賃金近傍の労働者が最も多い業種は、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業といった、比較的生産性の低い分野です。これらの業種で最低賃金の1.15倍未満で働く人は約265万人と、全体の63%を占めています。一方、製造業では約75万人で、その大半は女性でした。
これらの業種では、最低賃金が低いがゆえに生産性向上のインセンティブが働きにくいという悪循環に陥っています。つまり、最低賃金が低いがために、生産性を上げなくても済んでいるわけです。最低賃金を引き上げることが、生産性改善への動機付けとなるのです。
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