「引退」「貨物船転用」「解体」も…40年選手も続々と引退する「古参フェリー」。次々と消えゆくのも必然なワケ

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フェリーなら1隻でトラック100~200台を運べるうえに、コンテナによる無人航送もできる。

かつ近年はLNGガスなど次世代燃料への切り替えも進み、輸送中の環境配慮も求められる状況では、エコな新造船を導入しないと、輸送手段として選ばれないような状況であった。

宮崎カーフェリー・みやざきエキスプレス
2022年に引退した「宮崎カーフェリー みやざきエキスプレス」船内。昔ながらの雑魚寝船室だ(筆者撮影)
宮崎カーフェリー・たかちほ
2022年就航の「宮崎カーフェリー たかちほ」。コロナ禍で個室化が進んだ(筆者撮影)

さらに、コロナ禍による物流の役割の増加もあり、大型フェリーの新造船は2021年から2025年にかけて、「東京九州フェリー はまゆう・それいゆ」「宮崎カーフェリー たかちほ・ろっこう」「名門大洋フェリー きょうと・ふくおか」「ジャンボフェリー あおい」「さんふらわあ くれない・むらさき」「さんふらわあ かむい・ぴりか」と相次いだ。そして、新規航路の東京九州フェリー以外は、すべて古参のフェリー船体と交代している。

政府も、物流をクルマ・トラックからフェリー・鉄道に置き換える「モーダルシフト」を推進していることもあり、フェリー会社と国(鉄道建設・運輸施設整備支援機構:JRTT)が協力して新造船を導入できる「船舶共有建造制度」の条件を緩和、古参フェリーの置き換えを後押しした。

フェリー会社単独ではいかんともしがたい「古参フェリーの置き換え」の動機が、「2024年問題」「コロナ禍」「環境配慮」と、いっぺんに訪れた。こういった状況は、「ラッキー」とは言い難いが、国や自治体・物流業界の協力を一斉に得られるタイミングが重なったからこそ、快適な新造船への置き換えが、一気に進んだのだ。

松山・小倉フェリーの売店
松山・小倉フェリーの売店。廃止直前で人の気配がない(筆者撮影)

ただし、松山・小倉フェリーは事情が違う。この経路の移動がフェリー一択であった時代と違い、トラックが一斉に2006年に全通した「しまなみ海道」を経由するルートに切り替えてしまったのだ。

ルートとしては海上を突っ切るほうが近いものの、フェリーが18ノット(時速30km少々)、トラックが時速80kmでは、あまりに勝負にならない。

さらにコロナ禍によって、利用者が貨物・旅客ともに半減。役目が低下した赤字航路に新造船を投入できず、「くるしま」「はやとも2」の寿命とともに航路廃止となることは、誰の目にも明らかな状況であった。

古参フェリーが新しい船に置き換えられるか、それとも消えゆくのか。シンプルに結論付けると「必要とされたか、されなかったか」に尽きる。

古参フェリーの進路「海外・国内で再就航」「災害救助船」「チッタゴン行き」

航路を引退した「古参フェリー」は、どんな進路をたどるのだろうか?

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