学校で起こる問題の根本原因は「思考と関係のコリ」、研修の再構築で組織が一変する訳 組織開発コンサルタント・大野大輔氏に聞く
「どのような話し合いを経てどのような試行が行われ、どのような結果が得られたのかを明確に残すことで、過去の取り組みが可視化され、異動してきた人でもこれまでの経緯を理解しやすくなり、また『よりよい学校にするために毎年考え続ける』というサイクルが定着しやすくなります」
そして、教員の異動が多い学校現場において、改革を持続させる上で非常に有効なのが、地域との連携だ。
「地域の方が学校の取り組みやプロセスを理解し関わることで、学校の改革はより強固なものになります。そのためにも、CSの活動などを通して学校改革に地域の方を巻き込み、地域との協働を強化することが大切です。例えば、校長が交代しても地域が学校の変革の歴史を知っていれば急な方針転換が起こりにくく、改革の継続性を守ることができるでしょう」
今こそ必要なのは「創造的余白」
教員の長時間労働、精神疾患の増加、教員不足。「疲弊している」と言われて久しい学校現場で今こそ必要なのが、「創造的余白」であるという大野氏。
「創造的余白とは、新しいアイデアや価値を生み出すために意図的に残された空間やゆとりを指します。真面目な先生が多い日本の学校現場では、多忙さの中で余白が失われがちです。この余白をネガティブなものとして捉えるのではなく、業務改善を進めるなどして『創造的余白』を作り出し、先生方がリフレッシュし新たな価値を生み出すための時間として有効に使うことが、先生方の心身の健康と、教育活動の質の向上に直結すると考えています。
教育委員会にできることである公助の改革、学校にできることである共助の改革、一人ひとりにできることである自助の改革。今こそ、それぞれが動いていくことでこの『創造的余白』をうみだしていくために、私も伴走にさらに力を入れていきたいですね」
大野氏は続ける。
「何かを変えたいけれど、どこから手をつけていいかわからない。そんな時はまず、『もっと教材研究の時間が欲しい』『子どもたちともっと深く関わる時間があったらいいのに』など、自身の本音を素直に表現することから始めるとよいと思います。
心からの願いや小さな不満でも構いません。勇気を出して本音を打ち明けることで、『私もそう思ってた!』と共感してくれる仲間が見つかるかもしれません。最初は小さな共感からでも、それがやがて『みんなで働き方を良くしていこう』という大きな動きにつながる可能性を秘めています」
さらに効果的なのが、「パラドックス・クエスチョン(矛盾した問い)」を投げかけることだという。
「例えば、働き方改革について話す際に、『質を落とさずに、みんなの余白を生み出すにはどうしたらいいのだろう?』といった矛盾する2つの要素を織り交ぜた問いを投げかけるとします。解決が難しそうな問いをオープンな場で共有することで、周囲の人は『確かに、どうやったらできるんだろう?』と考え始め、2項対立にならず自然と建設的な議論やアイデアが生まれることもあります。このような問いから、探究のプロジェクトが始まることも少なくありません。一教職員の素直な一言、とくに矛盾を含んだ問いかけが、組織全体の変化を促す大きな一歩となることもあります」
大野氏が語る「研修リデザイン」と「誰も悪くない」というマインドセットは、学校が抱える課題解決への新たな道を示している。教職員の小さな一言から始まる「問い」が、「今日が楽しく、明日が待たれる学校」へと導くきっかけとなるはずだ。
(写真:大野氏提供)
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