学校で起こる問題の根本原因は「思考と関係のコリ」、研修の再構築で組織が一変する訳 組織開発コンサルタント・大野大輔氏に聞く

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これまで伴走する中で、それぞれの学校がそれぞれの状況に合わせて研修をリデザインした結果、持続可能な校内研究が実現したり、教職員が協働的に高め合える文化の創出がなされたり、さらには教職員全員で教育の質を高めるための業務改善が実現したりと、まさに「奇跡」と呼びたくなるような変化を数え切れないほど見てきたという。

学校が自走できるようになれば、研修をリデザインした後も自分たちで業務を見直し改善するという取り組みが持続的に行われるようになるという

誰もがチェンジメーカーになれる

学校をよく変えるためには、大野氏のような外部の伴走者の存在が不可欠なのだろうか。「いいえ、そんなことはありません」と、大野氏は言う。

「私のような関わり方は、あくまでも1つのアプローチにすぎません。これまで私が見てきただけでも、学校をより良くする役割を担う人々は、大きく分けて5つあります」

その人々とは、管理職やミドルリーダーをはじめとする先生、事務職員や養護の先生、教育委員会、そして大野氏のような外部の専門家だ。

「さらに、地域と学校をつなぐコミュニティ・スクール(CS)関係者や、PTAなど保護者の方々が改革のきっかけを作った事例も見てきました。学校に関わる誰もがチェンジメーカーになれると確信しています」

教員がチェンジメーカーとなる場合、最も重要な役割を担うのが、管理職だ。

大野氏は、管理職に大切なのは、「あえて弱みをみせ、ミドルリーダーを中心に周りの教職員を頼ること」と語る。

「『実は今、業務改善を進めたいのだけど、どうしていいかわからなくて。何かよいアイデアないかな?』など、ミドルリーダーを頼る姿勢が大切です。加えて、『こういう学校にしていこう』という方向性を示しつつ、例えばベテランの先生には『これまで教育を守ってきてくれた皆さんに頼りたい』、ICTに強い先生には『ぜひICT活用について助けてほしい』など、それぞれの経験や強みを活かす働きかけが大切だと思います」

現場と管理職の橋渡し役でもあるミドルリーダーについては、「管理職との対話を最も重視してほしいです」と語る。

「管理職が示した学校経営方針を理解した上で、『その経営方針をもとに、私はこれを実現したいんです』というように、管理職の視座に立って対話することが、建設的な関係を築く上で不可欠だと思います。また、ミドルリーダー同士のつながりもとても大切です。ミドルリーダー同士が連携しながら動き、管理職と対話し、そして若手などにも伝えていくつなぎ役となることで、改革のスピードが格段に上がることが多いです」

そして、若手の教員は、小さな一歩から始めることの重要性を説く。

「いきなり職員会議で真っ向勝負するのではなく、立ち話でも良いので『もっと楽しい運動会にするにはどうしたらいいですかね?』など、裁量権のあるミドルリーダーと対話したり相談したりすることから始めると良いと思います。実際に、このような初任者の声がミドルリーダーを動かし、その学校の運動会が変わったケースもあリます」

学校改革を持続させる3つの重要要素

学校改革がその年度にうまくいっても、改革のキーパーソンの異動などにより後戻りしてしまうケースは少なくない。しかし、大野氏はこの「後戻り」を防ぎ、改革を持続させるためには3つの重要な要素があると指摘する。

1つ目の要素は、「改革を一時的なものにしないために、一部の人が主導するのではなく教職員全員が当事者意識を持つこと」だ。

「『みんなで話し合い、アイデアを出し合い、試すことを決めて実行する』というプロセスを通じて多くの人を巻き込むことが成功のカギとなります」

日々の忙しさの中で、全員が当事者意識を持つことは難しいと感じるかもしれない。しかし大野氏は、そうした「ネガティブな感情や違和感」こそが、現状を変える大きなチャンスだと捉える。

「例えば『なぜこんなに会議が長引くのか』といったモヤモヤは、『どうしたら働き方が進むのだろう』『私に何ができるのだろう』という課題に置き換えることができます。この『課題に置き換える』という作業こそが、当事者意識を生み出します。そしてその課題を対話の場で話し合うことで、みんなで解決すべき具体的な課題へと変わっていくのです」

2つ目に大切なのは、「改革の過程やフローを言語化し、記録し、振り返ることを仕組み化すること」だという。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事