「遅れる」の汚名返上、イタリア鉄道なぜ激変? きっかけは「新参との競争」英仏間列車にも進出
例えば前述したパリ―リヨン間の運用はフランス国内のみだ。もっとも、この列車の場合はミラノ―パリ間を運行する列車の「間合い運用」と考えることもできるが、スペインの場合はイタリアとの直通などの接点は一切なく、完全にスペイン国内だけで完結している。

これを実現したのが、EU域内で施行された「オープンアクセス法」だ。そして、その影響を真っ先に受けて競争の波に巻き込まれたのが、ほかならぬイタリア鉄道だった。
EUは、加盟各国に対して列車運行とインフラを分ける「上下分離」化を指令し、併せて列車運行事業への参入を自由化する制度(オープンアクセス)を導入した。それまで各国の鉄道網を独占してきた国鉄からインフラを保有・管理する部分が切り離され、インフラを管理する会社や機関に線路使用料を払えば、さまざまな企業が列車を運行することが可能となった。これにより、多くの民間企業が鉄道事業に参入することになった。
「前時代的」イタリア鉄道に競争の波
だが、これまで事業を独占してきた旧国鉄系鉄道会社は青くなった。既得権益で何もしなくてもそれなりの収入を得られていたのが、競争相手の登場で収入を奪われかねない事態となったためだ。
劣悪なサービスや慢性的な遅延などで常に悪名高かったイタリア鉄道は、真っ先にその標的となった。
2012年に登場し、欧州初の民間企業による高速列車として有名になった「イタロ」を運行するntv社の創業者の一人、実業家のルカ・モンテゼーモロ氏は、「運賃は高いのにサービスが悪く常に遅れる前時代的な鉄道は必要ない」とイタリア鉄道を厳しく批判。「より快適で、適正な価格の列車を運行する」と語ったのは印象的だった。

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