「令和のコメ騒動」の"元凶"は農水省にあり!彼らが直視しない《コメ不足》深刻化のメカニズム
この人は商社で世界の穀物取引を長年担当し、業界で生き字引のように尊敬されているが、それでも難解だったと振り返る。官僚が示す数字を実質的に審議することはできないのであれば、形を整えるだけの仕組みといえるだろう。
筆者を含めて多くの専門家や農家が疑っているのが、需給見通しの土台となる収穫量の数字だ。農水省の統計情報部はさまざまな説明文書で「収穫量は正確だ」と主張してきた。
しかし、江藤、小泉両農相の下で数十万トンの備蓄米が市場にじゃぶじゃぶと放出され、ようやく品薄感が薄れてきたのを見ると、目詰まりではなく単純に収穫されたコメが少なかったと考えるほうが合理的だ。
詳細は省くが、自治体や農協、農水省などが把握できない零細規模のコメ農家がひっそりと脱落した、高温障害が想定以上にひどかった、人手不足の大規模農家のコメ収量が悪かったなどの複合的な要因が絡み合って作柄が低下し、供給量が減ったとみている。
統計情報部は人員削減の中で調査する力量が低下している。実際の現場で進行するコメ減産を調べきれなかったと考えるべきではないか。
官僚による需給見通しでいちばん困るのは、自分たちのミスを認めないことだ。農水省が唱える目詰まり論に批判が集まった3月末、「米穀の生産者・小規模事業者の在庫数量等に関する調査結果(令和7年1月末現在)」を公表した。従来よりも在庫調査対象を広げ、どこで目詰まりしているのかを明らかにする意図だったが、結果的には空振りとなった。
ミスを決して認めない官僚
しかも、調査は信じられないほどずさんなものだった。
第1に、調査の前提がおかしい。報告書は調査の背景(目的)として次のような説明をしている。
「令和6年産米の生産量は、令和5年産米に比べ増加している一方で、農林水産省が毎月調査し、公表している集荷業者の集荷数量や民間在庫量は前年に比べて減少し、在庫が分散していることで円滑な供給に滞りが生じている状況となっています」
多くの人が疑問に思っているコメの収穫量は正しいと強弁し、農水省が固執してきた目詰まり論を前提にして調査を組み立てたのだ。本気で米価上昇の原因を探るのなら、自分たちが間違っている可能性を含めて検証するのが当然だが、「自分たちは間違っていない」と初めから宣言したようなものだ。
そんな調査が信頼されるわけがない。最近のテレビ局などの不祥事後始末に倣って、第三者委員会に依頼したらどうか。
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