「令和のコメ騒動」の"元凶"は農水省にあり!彼らが直視しない《コメ不足》深刻化のメカニズム
第2には、計算方法がおかしい。怪しいと疑われている収穫量を前提として生産者段階の在庫数量をはじき出している。それでは収穫量が正確かどうかは検証できないのは当然だ。
アメリカの仕組みは異なる。同国農務省は毎月、穀類在庫と収穫量などを発表する。輸出や用途別の出荷数量などを厳密につかんでいるから、正確な在庫量を把握することが可能だ。
在庫量の数字につじつまが合わなければ、実情に合わせてさかのぼって収穫量の数字を修正できる。実際に今年1月に農務省が発表したトウモロコシの需給見通しで、2024年産の収穫量を前月発表よりも引き下げたのが一例だ。日本のように、在庫量を調べるのに収穫量を基準にしていたら、絶対に収穫量を見直すことはできない。
インド政府はこの春、小麦のオンライン在庫報告を国内業者に義務づけた。毎週金曜日に卸、小売り、貿易、加工業者は政府の報告サイトへ情報を入力する仕組みだ。報告サイトでは腕を組んだナレンドラ・モディ首相が「ウソつくなよ」とばかりに、画面からにらみつけてくる。

同国は1億トンの小麦を生産し、500万トンを海外に売る輸出国だ。それでも、自国の食料供給に不安があれば、躊躇なく在庫を調べる。需給の基本は正確な在庫情報を知るのが基本。インド政府の政策は理にかなったものだ。
今になって問題が噴き出した理由
30年続いた需給の緩和で、コメはいつでもどこでもどれだけでも手当てできる商材になっていた。農水省の需給見通しが多少間違っていても、市場にコメがじゃぶじゃぶと余っている状態なら問題にはならなかった。
しかし、想定以上にコメ生産が脆弱となった今日、需給のバッファー(緩衝帯)が小さくなり、農水省の見通しの甘さで問題が噴き出したということだろう。
コメ農家の退場は続いている。米価は上がったが、高齢化や先行きの不透明さからコメ生産が回復するかどうか、予断を許さない。
小泉農相は6月半ばの現地視察の場で、実態とずれていると批判の多いコメ収穫量などの統計データの見直しについて「現場の感覚に近づいたものにする」と語った。その後、2025年産米から「作況指数」を廃止、10アール当たりの収量を前年産と比較して示す方針を明らかにした。
感覚に近い作況(作柄)ではなく、実際の収穫数量を重視する姿勢は評価できる。しかし問われているのは、どこまで正確な数字を得られるかだ。持ち前の馬力で官僚を説き伏せ、納得できる需給見通しを作る改革を進めてほしい。
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