「令和のコメ騒動」の"元凶"は農水省にあり!彼らが直視しない《コメ不足》深刻化のメカニズム

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1つがコメ需給のわかりにくさだ。

市場で価格が決まる野菜や畜産物などほかの農産物と違って、コメは政府の統制色が色濃く残る。食糧法は「政府は、米穀の需給の適確な見通しを含む基本指針を策定し、これに基づき、生産調整の円滑な推進や中期的観点に立った備蓄の運営等により、全体需給の調整を図る」と定めている。

ポイントは、需給の見通しを農水省が決めて関係者に示すという仕組みにある。農水省の官僚が調べた収穫量や在庫など需給を示す数字を、専門家で構成する関連の審議会に示し、お墨付きを与える立て付けだ。だが、それが機能しなかった。

そもそもコメの統計は複雑だ。コメ需給の基礎となる年度が複数あるのが一例だろう。農水省の説明には、米穀年度(11月から翌年10月)、基本指針で検討する需給見通しの年度(7月から翌年6月)、政府の無税輸入(ミニマム・アクセス=MA米)や政府予算の年度(4月から翌年3月)などが混在している。

しかも、コメ需給の基礎となる重量は玄米が基本。消費者になじみがある精米は、玄米に約0.9をかけてはじき出すが、MA米などは玄米と精米が混在するため、ごっちゃで統計を表示するときもある。

需給を把握する柱の1つであるコメ生産の統計もわかりにくい。昨年の日本のコメ生産量は734万5000トンだが、コメ需給の計算に用いられるのは主食用の679万トンだけ。残りは米粉やみそなどへの加工、輸出、備蓄米、飼料米などに仕向けられる。これとは別に「くず米」と呼ばれるものも流通し、相場によって加工用に回ったり、主食用に混ぜられたりすることもある。

コメ不足を報じるジャーナリストの中で、この仕組みを理解できている人はほんの一握りだと思われる。正直に言えば、何回か直接説明を受けた農業ジャーナリストの私もわからないところがある。

審議会の実態はさながら「横綱審議委員会」

こうした複雑な方程式に当てはめて計算した需給見通しを専門家に諮問してチェックしてもらう段取りだが、これも機能していない。かつて審議会でコメの需給見通しを検討した委員の1人は、次のように実態を説明する。

「審議会の直前に農水省が数字を示して委員に説明するが、複雑で理解できない人が大半だ。私も理解できないことが多かった。(素人が多い)相撲の横綱審議委員会と同じだよ。結局は官僚主導だ」

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