スキマ時間に中国人は「読書」に走り、日本人は「バイト」に向かう "知識で劣る"ことを恐れ、読書に傾倒する《中国人の焦燥》

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中国では改革開放からすでに45年以上が経った。ここ十数年は経済がアクセル全開で成長し、国家も個人も「経済至上主義」の信念を持って突き進んできた。

しかし、今、中産階層の中から、こんなつぶやきが聞こえてくる。――「気がついたら、お金以外に何も残ってなかった」と。足りないのは、どうやら「文化」らしい。

この心の空白を象徴する流行語が、「没文化真可怕(文化がないってほんとに怖い)」。ユーモアの裏に、ちょっとした自嘲と焦りがにじむ。

大学の図書館
ポストコロナ時代では、人と交わりたい、人と語りたいという意欲があちこちで噴き出している。写真はある大学の図書館(写真:筆者友人提供)

2020年から続いた3年超のコロナ時期、ロックダウンに閉じ込められ、国民が閉塞生活を強いられた。ようやく解き放たれた今、人と交わりたい、人と語りたいという意欲があちこちで噴き出している。

ポストコロナ時代には経済格差がいっそう広がり、ライフスタイルも揺らぎ始めた。「文化」を求める声が静かに、だが確実に大きくなってきている。

若者に読書会について聞くと、「本を読むよりスマホで動画を見る時間のほうがずっと多い」と答える人が多い。ただ、「今の時代、スキマ時間を活用して学ぶのも大切だ」という意見には、多くの人が共感している。

一方で、中高年層からはこんな声が上がる。「中国の変化があまりにも速く、皆が先の見えない時代に戸惑っている。だからこそ、もう一度学ぼうという気持ちが芽生えるのだ」と。

出版不況、審査も厳しくISBN取得もままならない

皮肉なことに、読書会が盛んになる一方で、出版業界はますます不況に陥っている。

浙江省の某出版社編集者は、こう首を振る。「書籍の印刷部数は大幅に減少している。審査もますます厳しくなり、多くの書籍はISBNの取得すら困難な状況だ。例えば、ジェンダー研究関連の書籍さえ、ISBNは取得できない……ある著者が読書会を開催して自分の本を宣伝しようとしたが、望ましい結果が得られなかった」。

読書会を運営して経済成果を上げられる樊さんのような人間は実際には少なく、中には純粋な興味から読書会を主催している人もいる。

ただ、「スキマ時間で読書・勉強する」雰囲気を促進しようという点では、そうした活動も評価に値する。

黄 文葦 ジャーナリスト

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こう ぶんい / Kou Buni

日本と中国、日本語と中国語を愛する在日中国人フリージャーナリスト。学校法人白萩学園名誉理事。中国の大学と日本の大学院でマスコミを専攻、日中両国のマスコミの現場を経験。2000年来日以降、日本語と中国語で教育、社会、文化の問題に焦点を当てたコラムを執筆し、両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。19年に電子書籍「日中文談: 在日中国人の日本観(エッセイ)」を出版。20年8月から23年7月までの3年間、日中文化比較のメルマガ「黄文葦の日中楽話」を発行。24年10月、「新中国語から中国の『真実』を見る」(風人社)を出版。

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