スキマ時間に中国人は「読書」に走り、日本人は「バイト」に向かう "知識で劣る"ことを恐れ、読書に傾倒する《中国人の焦燥》
読書会について尋ねると、誰もが口をそろえて挙げる名前がある。
それが「樊登(ファン・ドン)」だ。読書会ビジネスの先駆者として知られ、最も成功した人物とも言われている。
樊さん(49歳)は名門大学で博士号を取得し、かつては中央テレビの人気キャスターだった。2013年、彼はキャリアを手放し、読書の力を広めることを選んだ。
同年6月、西安で初めての無料読書会を開いた。参加者はわずか30人。だが彼はめげなかった。講義を重ねるごとに内容を磨き、参加者の心をつかんでいった。
評判は口コミで広がり、やがて講義のPPT資料を求める声が多く寄せられるようになる。そこで彼は、思い切って有料化に踏み切った。こうして誕生したのが「樊登読書会」だ。
彼の掲げたミッションは、「読む時間がない」「何を読めばいいかわからない」「読んでも身につかない」という現代人の「読書三大課題」を解決すること。テレビの第一線から離れ、読書の布教者へ。その歩みは、知の価値が見直される時代において、一つの象徴になっている。
2025年時点で世界中に約600の支部を展開し、会員数は200万人を超えている。ビジネスモデルとしては、年会費365元(約7300円)の会員サービスを中心に、書店のフランチャイズ展開やオンライン講座の販売などがあり、年間の売上は10億元(約200億円)を超えると報告されている。
樊さんの講演を聞いたことのある友人は、「樊さんは弁舌が非常に巧みで知識が豊富だ。情熱に満ちていて、聴く者に多くの学びをもたらすはずだ」と評価する。
一方で、「でも、樊さんは若者たちに起業することを勧めていて、起業は難しくないと主張した。それは、私はあまり賛同できないね。現実は厳しい」とも述べた。
中産階層の間で広がる「知識焦燥」
読書分野の上海のマスコミ編集者易さん(40代女性)は読書会について、鋭く分析した。「私は、日本旅行の時、あちこちの書店に行った。やはりとても楽しくて、読書という習慣にお金をかけたいと思う人も多いと感じた。しかし中国にはそういった雰囲気がなく、実際に本を読む人がまだ少ないのではないか」。
「私が接した多くの読書会は大学が自主的に主催しているもので、消費行動とは関係がない。商業的な読書会は、取り上げる本が比較的大衆向けで、いわば『おすすめの書籍リスト』と『読書の伴走サービス』を提供し、参加者が本を購入するような仕組みだ」(易さん)
なぜ読書会に熱中する人が増えてきたのか。易さんはその要因を「中産階層の『知识焦虑(知識焦燥)』だ」と断言した。
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