スキマ時間に中国人は「読書」に走り、日本人は「バイト」に向かう "知識で劣る"ことを恐れ、読書に傾倒する《中国人の焦燥》

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知識焦燥とは、自分の知識や教養が足りない、あるいは他人より劣っているのではないかという不安や焦りを意味する。情報があふれる時代、「もっと学ばなければ」「知識がなければ取り残される」というプレッシャーが人々を追い立てている。

SNS上では「この本から何を学んだか」といった投稿が目立ち、知的投資が中産階層の新たなステータスになりつつある。そうした空気の中、読書会は知識を共有し、自分の教養を証明する場として評価されてきた。

大学の読書会の様子
読書会は中産階層の中で、「知識を共有し、自分の教養を証明する場」として重宝されつつある。写真は大学の読書会の様子(写真:筆者友人提供)

中国政府は「国民読書運動」を推進している

中国の商人たちは、政府の政策を巧みに読み取り、そこからビジネスチャンスを見出すのが得意だ。

読書会の広がりの背景にも、中国政府による「全民阅读(国民読書運動)」の文化政策が大きく影響している。

2014年、国務院が初めて政府活動報告の中で「全民阅读」の推進を明記。2022年には「第14次5カ年計画(2021~2025)」にも盛り込まれ、「読書運動」は国家の文化戦略として位置づけられた。その結果、2023年には全国で1億人以上が読書関連イベントに参加したという。

「市民読書月」や「親子読書週間」といったイベントも多くの都市で定着し、地方政府も読書予算を確保するようになった。「書香城市(本の香りがする都市)」の構築も積極的に進められている。

また、都市化や中産階層の拡大に伴い、自己啓発や精神的充足を求める人々が増加したことも、読書会ブームの追い風となっている。近年では、農村部にも「移動図書館」や「村の読書会」が設立され、都市との文化格差の是正を図る動きも見られる。

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