古材生かしたリノベのコーヒー店や麻婆豆腐食堂…「上諏訪」に移住・開店ラッシュなぜ? 《立役者は"リビセン"》長野県諏訪市
ちなみに、当時リビセンでリノベーションをメインで担当したのが、「麻婆食堂どんどん」店主の千葉さんだったそうで、「どんどんの最高傑作の店がうちなんです」と奥村さん。みんなつながりあっていて、おもしろい!


そんな太養パン店には、地元の人とおぼしき年配のお客さんや観光客が次々と訪れ、たくさんのパンを買っていきます。
「週末は県外からのお客様が8割。観光の方は特にたくさん買ってくださって、客単価は2000円以上。頼まれてきてシェアしたり、おみやげにしたりするみたいですね。
もともと、僕が子どものころは、この一帯は個人商店がなんでもそろっていて、村部からも買い物に来るようなにぎやかなまちだったんです。でもスーパーなどの大型店に押されて、時代とともに典型的なシャッター街に。10年くらい前まで高齢者しか歩いていなかった。
だけどリビセンができて、空き店舗を利用して若い人が開いた個人店が増えて、コロナ禍のあとくらいから、まちを歩く若い人たちが本当に増えた。新しい時代の流れですよね。我々はものを捨てまくってきた世代だけど、古いものを捨てずに大切に使っていこうという文化が、今の時代にマッチしているんだと思います」
上諏訪に空き店舗はまだ多いから、ポテンシャルはある、と奥村さん。
「リビセンや『すわリノ』が空き店舗のコーディネートをしてくれて、まちなかからムーブメントが生まれていますよね。うちの父の代の友人たちが大家なんだけど、そうやっていい前例ができると貸しやすいし、信用できる人が来てくれてよかったと、みんな喜んでいます」

歩いて楽しい、住んで豊かになれるまち
上諏訪のまちにはリビセンが放つ「暮らしを楽しむ」エネルギーにあふれていて、そこに引き寄せられるように移住してきた人が多いのがとても印象的でした。
「徒歩圏内に自分がほしかったお店がいくつもあるから、もう東京に行かなくていい」という移住者の声も。地域資源を活用したエリアリノベーションで、歩いて楽しい、住んで豊かになれるまちが整いつつあると実感しました。
意外だったのは、リビセンがつくったムーブメントに呼応しながらも、リビセンが関わらない独自のお店も近年増えているということ。世界観に共感できない人はまちに入りづらい、気まずいというような空気感はなく、まちとして多様化し、バリエーションが増えるのもまた、素敵なことだと感じました。
一方で、リビセンではこれまで培ってきたノウハウをオープンソース化して、取り組みやカルチャーを広める活動も行っています。全国各地にリビセンのようなお店ができ、地域資源を使い継ぐことが当たり前になれば、日常はもっと豊かになることでしょう。そんな近い未来に胸が躍る気持ちです。
取材・文/塚田 真理子
SUUMOジャーナルの関連記事
●広島市の猫屋町に新店増加でにぎわい。建築家 谷尻誠・吉田愛が築50年ビルを拠点に、食堂にアイスショップ、サウナ等でまちづくり実践中 複合ビル「猫屋町ビルヂング」
●廃屋を修繕しながら暮らす村「梅村(バイソン)」に住民が続々! 空き家をよみがえらせる廃屋ジャンキーたちに話を聞いてみた 兵庫県神戸市
●地元に残したい店で買い物や食事をして地域を育てる「バイローカル」運動。大阪・昭和町に10年で70店舗以上も増加、土地評価も上昇中
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら