日本発イノベーションであるドコモの“絵文字”が終了し、世界規格の“Emoji”だけが残る理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この小さなイノベーションは瞬く間に日本中に広がり、iモードの「キラーコンテンツ」として大成功を収めた。絵文字は単なる付加機能を超え、新しいコミュニケーション文化そのものとなった。2016年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)が栗田氏の初期絵文字176個を永久コレクションに収蔵。日本発の小さなピクトグラムが、世界の文化遺産として認められた瞬間だった。

互換性の悪夢からグローバル標準へ

ドコモの成功を見た競合キャリア各社は、独自の絵文字システムの開発に着手した。au(KDDI)は1999年にEZweb絵文字を、ソフトバンクも独自の絵文字セットを投入し、「絵文字戦争」と呼ばれる競争が激化した。

各社の絵文字は、Shift-JISコードの異なる領域に割り当てられたため、キャリア間での互換性は皆無だった。当初は意図した絵文字が文字化けして「〓」などの記号に置き換わる問題が日常的に発生していた。

この状況に対し、2005年頃から各キャリアは自動変換機能を導入した。例えば、auで「フライパン」の絵文字を送信すると、ドコモでは絵文字の代わりに「フライパン」という文字に置き換えて表示するようになった。当時としては現実的な対応策だったが、キャリア間の根本的な互換性問題は残ったままだった。

転機は2008年に訪れた。GoogleとAppleが、日本の絵文字をUnicode国際標準に組み込む提案を「emoji4unicode」プロジェクトとして開始したのだ。彼らは日本で生まれた絵文字文化が世界的に広がる可能性を見いだし、グローバルな互換性の確保を目指した。

2010年のUnicode 6.0で722の絵文字が国際標準として採用されると、状況は一変した。2011年、AppleがiOS 5で絵文字キーボードを世界展開。2013年にはGoogleがAndroid 4.4で標準搭載。絵文字は瞬く間に「Emoji」として世界共通のコミュニケーションツールとなった。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事