ベール脱いだ、三菱重工「新交通システム」実力は? 架線レスでコスト大幅減、導入できるのはどこか

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一般的な電車が頭上の架線から取り入れた電気を動力源として走行するように、AGTは軌道に設置された給電レールから電気を取り入れて走行する。

しかし、プリズモは違う。三菱電機と武蔵エナジーソリューションの共同開発による次世代蓄電モジュールをプリズモ用にカスタマイズして搭載し、蓄電モジュールに蓄えられた電気のみで走行が可能となった。このため、給電レールが不要となり、建設費が抑えられる。また、給電レールを設置していないのだから点検・交換費用もかからない。

では、蓄電モジュールだけでどのくらいの距離を走れるのか。この点について尋ねると、「30秒あれば、1駅走るくらいの電力を蓄えられる」と藤岡氏が胸を張る。距離にして約2kmだそうだ。駅に停車中のわずかな時間で、次の駅までの距離を走る分の充電が可能だという。

次世代蓄電モジュール
2024年の国際鉄道見本市「イノトランス」の三菱電機ブースに展示された次世代蓄電モジュール(記者撮影)

軌道もシンプルな構造に

駅間が何キロにも及ぶような路線だと短時間で十分な電力をチャージできないかもしれないが、AGTが得意とする都市部や空港のターミナル間であれば、2km分充電できれば問題なさそうだ。これを繰り返せば確かに給電レールは必要ない。

車両の停車中に蓄電されている状況が係員の持つPC端末のモニターに示されたが、充電量を示す目盛がぐいぐい上昇し、あっという間に充電が完了した。さらに、運行中の車両の減速時に発生する回生電力を無駄なく使用することで従来よりも約10%減となる省エネ運行を実現したという。

インフラのスリム化もプリズモの特徴だ。給電レールが不要になったことで軌道が小型化されただけではない。三菱重工のAGTでは車両の両側に案内軌条を設置する「サイドガイド方式」が採用されることが多いが、プリズモでは軌道の中央に案内軌条を1本だけ設置する「センターガイド方式」を採用した。側面の案内軌条がなくなったことで、軌道構造物が大幅に削減され、建設費やメンテナンス費用の大幅な削減につながった。

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