発電量ゼロの日本原電に、東京電力が巨額支払い 原発事故から1年

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電力会社は原価に一定の利潤を上乗せした金額を基に、電気料金を設定できる総括原価方式を採る。仮に東電が11年10月以降も11年4~9月期と同程度日本原電に支払ったとすれば、年間400億円規模のムダな費用が、電気料金に上乗せされることになる。電力料金値上げの前提として、徹底したコスト削減が求められているにもかかわらずだ。

こうした“常識外れ”の取引を行う背景には、業界の特異性がある。日本原電は1957年、日本初の商用原発となる東海第一発電所建設に際し、政府の国営化により電力事業の主導権を握られることをおそれた電力各社が出資し誕生した。

その後、各電力会社が自ら原発を造るようになり、存在意義は薄れたが、「競争を避けるため、新しいタイプの原発を先行導入する実験的な会社」(原子力資料情報室の西尾漠共同代表)として生き延びてきた。

現在も大株主の大半は電力会社(表)で、役員には電力各社のトップが並ぶ。電力会社にとってはいわば「特別な兄弟」(西尾共同代表)のような存在だ。日本原電が赤字に陥れば、結局株主である電力会社が支援しなければならない。

だが、「原子力村」のなれ合いのシワ寄せを受けるのは、電気料金を負担する利用者だ。電力各社は過去の歪んだ慣例を見直さなくてはならない時期を迎えている。

 


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(倉沢美左 =週刊東洋経済2012年3月17日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


photo:KEI CC3.0 BY-SA

 

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