台湾に来た中国人配偶者「陸配」がなぜ台湾の政治的問題として浮上したのか、その歴史と現政権の思惑、そして移民・人権問題(中)
さらに陸配には「経済目的の偽装結婚ではないか」という疑いが台湾社会でつきまとう。身分証をもらったらすぐ離婚する陸配が少なくないためだ。
これに対し上官乱さんは「最初は本気で結婚しようと思って来たけれど、その後にひどい仕打ちを受け、それでも子どものためにがまんする。そうして身分証を確保したら離婚する」というのが実態だという。
「いつまでも偽装結婚を疑われる」
「陸配の中で台湾にいられなくなった人は、とっくに中国に帰っています。台湾に残っているのは、実は能力の高い人たちなのです。それでも台湾で陸配は、いつまでも偽装結婚を疑われ、社会的に認知されません」
偽装結婚は確かにあったという。今となっては、陸配に対して中国での仕事や財産に関する厳しい審査があるが、以前の審査は緩かった。そのため1997、98年ごろから偽装結婚が増えた。当時は「蛇頭」と呼ばれる仲介業者がいた。そんな仲介業者を経て台湾に来ると、売春に従事させられるケースもあった。
2000年から2004年まで、人口約2300万の台湾に、年間1万人から2万人の陸配が台湾にやって来た。そのうち、どのくらいが売春に従事したのかはわからない。その比率はそれほど高くなかったという指摘が今では出ている。
しかし、当時の民進党の陳水扁総政権(在任2000~2008年)は、それを理由に陸配に対する審査を厳格化し、事前面接といった措置が行われるようになった。このときから偽装結婚はできなくなった。
実際に1987年の中国への親族訪問の解禁以来、台湾にやって来る陸配は増加を続けていたが、2004年をピークに年々減少していく。陸配が台湾にやって来る際の審査が厳しくなったことが原因だった。
2008年に発足した国民党の馬英九政権からは、年間1万人を下回る。そして民進党の蔡英文総統が誕生した2016年には東南アジア出身の配偶者が陸配を上回り、コロナの時期は年間2000~3000人に減る。コロナ後は一時的に増えたものの、その数は右肩下がりだ。
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