「自由が大切だからといって、銃を持つ人の自由を許すとどうなるのか?」ノーベル賞経済学者スティグリッツが問い直す
現代の経済はますます金融化しており、そのせいで巨大な負の外部性が生じる可能性が高まっている。2008年の金融危機は、マクロ経済の外部性が中心的な役割を果たした一例であり、金融化の進展により、その外部性の規模も増したことを示している。
ごく一部の金融問題が世界全体に広がる
アメリカの銀行システムが崩壊した原因は、過剰なリスク負担、つたないリスク管理、不十分な規制にあった。その結果、グローバルな経済が脅威にさらされ、アメリカ政府がおよそ7000億ドルもの資金を費やして銀行システムを救済するはめになった(さらに連邦準備銀行から秘密の助成を受けた)。
デリバティブやそれに関連する無数の複雑な証券が、システム全体のリスクを高め、金融システムのごく一部の金融問題が、金融システム全体あるいはその大部分の破綻へとつながる可能性を高めたのだ。
実際、リーマン・ブラザーズの破綻はすさまじい影響を与えた。これらの金融商品を売買した人のなかに、それらの商品がシステム全体にどんな結果をもたらすことになるのか、その取引に直接かかわっていない人々にどんな影響を及ぼすことになるのかを、わずかでも理解している人はいなかった。
そういう人たちは、自分たちが手に入れる経済的利益のことしか考えていなかった。自分たちやほかの人たちが同様の金融商品を買えば、金融システムが不安定になり、自分たちも社会のほかの人々もみな、ますますリスクにさらされること、少なくとも政府が救済に乗り出さなければそうなることを理解していなかった。
外部性はそれだけにとどまらなかった。銀行システムのこうした行動は、アメリカ経済だけでなく全世界に影響を及ぼした。国境を越える外部性の事例はほかにもたくさんあるが、グローバル化が進展し、あらゆる地域のあらゆる人々がいっそう結びつくようになるにつれ、その力はことのほか強くなっている。
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