「自由が大切だからといって、銃を持つ人の自由を許すとどうなるのか?」ノーベル賞経済学者スティグリッツが問い直す
私たちは、かつてないほど人間が密集した環境で暮らしている。世界の人口は、1950年から2020年までの間に3倍になった。人類史のその短い期間のうちに、世界のGDPはおよそ15倍に増え、人類は地球の限界にまで追い込まれている。
それを示す現象のなかでもっとも重大なのが、人類の存続を脅かす気候変動である。だが、環境外部性はそれだけではない。私たちはみな、大気汚染や水質汚染、有害な廃棄物集積場に悩まされている。
洪水、森林火災、酷暑……このままでいいのか
驚くべきことに人間はいまだに、実際に気候変動が起きているのか、大気中の温室効果ガスが気候変動の主要な原因なのかを議論している。1896年にはすでにスウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウスが、大気中の温室効果ガスが増えれば地球は温暖化するとの予測を発表していたが、そのわずか数十年後には、この偉大な科学的知見が立証された。私たちは現在、至るところでこの気候変動の影響をまのあたりにしている。
今後数年のうちに、これまで以上にその力を実感することになるのはほぼ間違いない。気候変動は、地球の温度が数度上がるというだけの話ではない。異常気象が増えるということでもある。旱魃が増え、洪水が増え、ハリケーンが増え、酷暑や厳寒の期間が長くなり、海水面が上昇し、海洋の酸性度が上がり、海の死や森林火災、生命や財産の喪失など、あらゆる悲惨な結果がそれに続く。
注目すべきは、気候変動に関連するコストやリスクがこれだけ明らかであるにもかかわらず、一部の経済学者が、ほとんど何の対処もするべきではないと主張している点である。
ここで最終的な問題となるのが、世代間および世代内の自由(機会集合)のトレードオフである。現世代が環境を汚染するのを制限すれば(それにより石炭会社の利益や自由は縮小する)、その代わりにのちの世代の人々が、大金を費やして気候や海水面の大規模な変化に対応しなくても、居住に適した環境で暮らす自由を拡大できる。
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