低迷するハリウッドと比べ、日本映画はなぜ盛り上がっているのか…「邦高洋低」時代を業界誌記者が徹底分析

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これら2つの相乗効果により、今の日本映画の盛り上がりが生まれています。

ミニシアターは危機的状況

メジャー作品が好調な一方で、インディペンデント映画の状況は楽観的ではありません。

芸術性や技術的な作品としての評価と、世界マーケットにおけるビジネス的な作品の価値とは別です。大手映画会社とインディ系の中小企業の格差を認識したうえで、日本の映画ビジネスにとって中小作品も多様に併存できる、両輪となることが大事であることも考えなければなりません。

1980年代から2000年代にかけて、日本では個性豊かな映画を上映する「ミニシアター」が隆盛していました。

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ミニシアターの存在により、新人や若手監督のデビュー作などを公開する場が今よりも数多くあったのです。じっくりと時間をかけてそれらの作品を上映し、新しい才能を育てていく環境があり、そこから次世代のスター監督が輩出される構造がありました。

しかし、現在はミニシアターの経営が厳しくなり、閉館が続き、新人や若手監督の作品を公開する場が減ってしまったのです。

中小規模の作品のヒット作が減り、話題にならなくなると、その規模の作品に出資することが控えられ、新しい才能の作品をバックアップしにくくなる、「負のスパイラル」に陥っているともいえます。

大手映画会社を中心に大ヒットが生まれる「正のスパイラル」と、中小規模の作品をとりまく「負のスパイラル」。この2つの輪が同時に存在しているのが、日本映画の現状です。

和田 隆 映画ジャーナリスト、プロデューサー

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わだたかし / Takashi Wada

1974年東京生まれ。1997年に文化通信社に入社し、映画業界紙の記者として17年間、取材を重ね、記事を執筆。邦画と洋画、メジャーとインディーズなどの社長や役員、製作プロデューサー、宣伝・営業部、さらに業界団体などに取材し、映画業界の表と裏を見てきた。現在は映画の情報サイト「映画.com」の記者のひとりとして、ニュースや映画評論などを発信するとともに、映画のプロデュースも手掛ける。プロデュース作品に『死んだ目をした少年』『ポエトリーエンジェル』『踊ってミタ』などがある。田辺・弁慶映画祭の特別審査員、京都映画企画市の審査員も務める。

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