低迷するハリウッドと比べ、日本映画はなぜ盛り上がっているのか…「邦高洋低」時代を業界誌記者が徹底分析
興収10億円以上の邦画は『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』ほか31作品。引き続きアニメが好調で、2作品が興収100億円を突破。邦画上位10本のうち、アニメが6本を占めています。
50億円超えは、2023年より2本増えて7本でした。
その一方で、洋画は2023年のアメリカ脚本家組合と俳優組合によるストライキの影響により、公開本数の減少が2024年に表面化しました。公開本数は邦画が685本で前年より9本増、洋画が505本で51本減。邦画と洋画合計で1190本、2000年以降では4番目の本数です。
日本国内において興収10億円以上の洋画は、『インサイド・ヘッド2』ほか10作品。
2023年は15作品だったので大きくダウンし、50億円以上は1本のみ。2000年代に入り、2006年に邦画の興収が洋画を上回り、翌年に洋画が巻き返しましたが、2008年から邦高洋低の状態が続いています。
低迷するハリウッド映画
洋画の不調は日本国内に留まりません。
エンタテインメントの情報メディア「GEMStandard」のレポート「世界・アジア太平洋映画興行概況」(国・地域別推移)によると、世界の映画興行収入はコロナ禍を経て、2023年は340億ドルに達しましたが、2024年は310億ドル(予想)に減少(出典:アメリカ・Comscore社)。北米の興行成績も2023年の91億ドルから2024年は86億ドルと、5.5%減となっています。
なぜ低迷するハリウッド映画と比較して、日本映画はこれほど盛り上がっているのか。
とりわけ、これまで世界のマーケットでは通用しがたいと思われていた実写映画において、盛り上がりが起こっているのか。そのヒントは、業界の構造にあると考えています。
東宝、松竹、東映、ワーナー・ブラザースといった大手映画会社が、ベストセラー小説や漫画の原作元の出版社や、高視聴率を記録した人気ドラマを放映したテレビ局などと「製作委員会」を組んで、すでに人気のあるコンテンツを「映画」としてヒットさせる制作の仕組みができあがっているのです。
さらに、東宝を例にすると、観客は、大ヒットした東宝配給作品をTOHOシネマズなどで鑑賞すると、その際に東宝配給作品の次回作の予告編を自動的に見ることになります。
当然、大ヒット作となると、それだけ多くの観客が予告編を見ることになるので、作品の認知・期待度が上がり、ヒットのスパイラルが次々と生まれるのです。
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