【朝ドラ】"アンパンマン誕生"裏にある意外な存在 やなせたかしがヒントを得た「名作映画」
「キングコングの中では翼竜と闘うところがよかったのに、戦後のリメイク版ではこのシーンはカットされていてがっかりした。キングコングは白黒版の古典のほうが絶対にいい。フランケンシュタインは、これはなんといってもボリス・カーロフのメイクアップがいい。あの怪人は空前絶後の傑作だと思う」
やなせは、朝日新聞の「大切な本」というコーナーでも、イギリスの小説家 メアリー・シェリーの 『フランケンシュタイン』を挙げて、こう述べている。
「科学的に生命を創造するというテーマのこの19世紀初頭にかかれた傑作の影響を強くうけてぼくはアンパンマンを創作した」

銀座での経験がなければ、アンパンマンは生まれなかったかもしれない。入学早々に「一日に一度ぐらい銀座に出て散歩するがいい。そこで吸収するものは、学校で習うものよりも栄養になる」という担任の言葉をやなせは忠実に実践したが、それは間違いではなかった。
また、やなせは「アンパンマン」で、ばいきんまんが作ったロボとして「フランケンロボくん」というキャラクターを登場させている。「フランケンロボ」に命を吹き込みながら、やなせは銀座で映画に夢中になった青春の日々を思い出したことだろう。
配属将校も呆れた自由な校風
みなお金に余裕はなかったものの、劇場で映画を観たあとは、喫茶店でひたすら語り合い、あとは散策することが多かったから、十分に楽しめたらしい。懸賞に応募して稼ぐ方法もあったが、入選が周囲にバレてしまうと、かえってお金がかかったかもしれない。やなせはこう振り返っている。
「誰かが入選して金が入ると、当然のようにクラスメートは彼にたかった。 なにしろ全部で20人だから、兄弟のように親しかった」
自分らしく生き生きとした高校生活を送った、やなせ。だが、戦争の影がいよいよ色濃くなってくる。
当時の必須科目に「学校教練」というものがあり、配属将校は図案科の生徒をたびたび怒鳴り、目の仇にしていたという。そもそも、東京高等工芸学校の制服は背広で、制帽はソフトだったため、軍装するとどうにも変な格好になった。
「皇居前で全学生の分列行進があり、制服制帽で参加せよと指示されていたが、われらの東京高等工芸学校は、ソフトに背広に軍装、鉄砲かついで参加という珍妙奇スタイルとなった。大学生の角帽にゲートルというのはそれなりにさまになっていたが、われらの母校の行列はほとんど吉本興業の喜劇である」
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