JR湖西線「空振り4割減」強風予測システムの効果 特急迂回運転を回避、普通列車は運転区間延長
試験導入の結果、「空振りの発生率が約4割改善した」(千葉主査)。サンダーバードの不必要な迂回運転を避けることが可能となったのだ。
また、細かい区間ごとの強風予測が可能となったことで、普通列車の運転可能な区間が延長できるようになる。「たとえば、近江今津―近江塩津間で強風が予想される場合、従来は近江今津よりも5駅手前の近江舞子で折り返し運転をしていましたが、精度が高まったことにより近江今津で折り返し運転することが可能になります」(同)。
結果は良好と判断され、今年2月から強風予測システムが実際の列車運行で活用されることになった。JR西日本がSNSで発信する湖西線の列車運行情報によれば、今年3〜4月の運転規制は7日間。システムがどのくらい効力を発揮したのか、JR西日本に問い合わせたところ、「今まさに導入効果の検証を進めているところ」とのことだった。

ほかの路線に応用できる?
今後について、千葉主査は「改善したとはいえ、4割では完璧ではない。さらなる精度の向上に向け、システムを改善していきたい」と気を引き締める。では、強風予測システムをほかの路線に応用できるか。この点について尋ねると、JR西日本のエリア内で強風が課題になっているのは湖西線のほかにはJR西日本とJR四国のエリアにまたがる瀬戸大橋線(岡山―高松間)があるが、強風予測で重要となるのはJR四国エリアの瀬戸大橋であり、「ほかの路線に広げることはまだ考えていない」(千葉主査)とのことだった。
また、強風だけではなく、雨や雪の予測にも使えるかと尋ねると、「トライはしてみたいが難しい」(兒玉氏)。大阪ガスの西村氏は「降水量をぴたりと当てるのは難しいが、鉄道以外の分野にも影響が大きいので課題の1つであると考えている」と話した。
鉄道分野におけるAIの気象予測は端緒に就いたばかりだ。湖西線の強風予測をきっかけにどのように発展していくか。空振りの回避だけでなく、その逆、つまり、予想外の気象異常が突然発生して列車が立ち往生するような事態の回避にも有効なはずだ。この分野の研究が進展することを願ってやまない。

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