JR湖西線「空振り4割減」強風予測システムの効果 特急迂回運転を回避、普通列車は運転区間延長
同社デジタルソリューション本部でデータアナリティクスを担当する千葉諒太主査がこう振り返る。「社内には大量のデータがあるが、それをどう活用すればよいかがわからなかった。そんなときに大阪ガスさんとお話しする機会がありました」。
大阪ガスは東京ガスに次ぐ都市ガス2位。「エネルギー事業は気象の影響が大きい。ガスは寒い時期のほうがよく利用されます」と、大阪ガス・エネルギー技術研究所の西村浩一エグゼクティブフェローが話す。同社は2008年から独自手法による気象予測を開始。2018年には気象予報業務の許可を取得している。西村氏も気象予報士の資格を持つ。すでにゼネコン大手の大林組とAIの気象予測を用いた万博会場の建設工事で実証実験を行ったこともある。

気象庁より細かい予測
両社は2019年から強風予測に関する共同研究を開始、2022年6月には湖西線沿線に試験導入することを決めた。気象庁はエリアを一辺5km四方のメッシュに分けて予報を行っているが、大阪ガスの気象予測データは2.2kmメッシュで気象庁よりも解像度が高い。このデータをJR西日本が開発した学習AIモデルに入力し、湖西線沿線14カ所の風速と風向きを24時間先までの予測値として出力する。
「大阪ガスさんの精度が高いデータを活用することで、よりピンポイントの予測に寄せていくことができる」。エンジニアとしてシステムの開発に携わったJR西日本デジタルソリューション本部の兒玉庸平氏がこう説明する。
出力されたデータは近畿圏の在来線の運行管理を担う大阪総合指令所に届けられる。当日朝に得られたデータは午後の運行の、夕方に得られたデータは翌日午前中の運行の判断材料として活用される。
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